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なんでそんなことを聞くんだろうと僕はビクビクしてしまって、そんなありふれた能力はいらないと言われてしまうんじゃないかと、一生試合に出なくていいだとか言われてしまうんじゃないかとか——それはそれで、僕としては嬉しいけれど——考えて、喉が渇いてきてしまう。
「なるほど」
男の声だ。女と男が混在していて、見知らぬ顔ばかりのそこに僕の出来の悪い頭はしっかりと混乱していた。
「あたしは庭師、エマなの」
「ぅえ…っあテディっ」
「それはさっき聞いた」
突如始まった僕の部屋にやってきた女の人の自己紹介にテンパって、自分の名前をもう一度言おうとしてしまったところ、弁護士の人に止められる。彼は僕を横目で見て、それからため息をついて前髪を撫でた。
「弁護士、フレディライリー。」
「私は医師のエミリーよ。怪我をしたら私のところまでいらっしゃい」
「…「泥棒」のクリーチャーピアソンだ」
怒涛の自己紹介ラッシュに、僕はポケットからメモ用紙を出して人の顔と名前、それと職業を書き示す。
「中々、絵がお上手なのですね」
「ヒ…ッ！」
「驚かせるつもりはなかったのですが…。私は占い師、イライクラークです。建築家というものは芸術にも通じるのでしょうか…」
「し、らないです…」
僕は確かに後ろに人がいないことがわかっていたのに突然話しかけられた挙句その瞳が布で隠されていたのだから、見れるはずのないものを見られてしまった感じがして、恥ずかしかった。
「みんな、自己紹介なの！テディさん、人のことを覚えるの苦手みたいだから！」
僕は僕の弱点を人に大声で言いふらされてしまったような恥から逃げ出したくなって、立ち上がる。やっぱり一発目その足に力が入らなくてその体は人によって抱き止められた。
「さいあく…」
その後も続いた自己紹介は僕のメモ帳の3ページはゆうに使ったし、いろんな国の食の並んだ食卓に吐き気がして夕飯は何を食べることもできなかった。きっと、今日の夜はお腹が空く。早く眠らなくちゃ。ああ、なんて、厄日なんだか。
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作者名：ちーうし | 作成日時：2024年1月22日 0時
