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「いるにはいるけれど、みんな食堂にいるわ。彼がくるのを今か今かと待ち望んでいるのに呼びつけて彼をおぶってあげなさいは流石に申し訳ないじゃない」
うーだとか、あーだとか男の声が聞こえて、5回くらいそれをループしたあと、彼は諦めたようにひれ伏した僕の脇の下に手を突っ込んで引っ張った。
「持ち上げらんねーからな」
「ごめ…あ、…ありがとう、ございます……」
神父から、謝罪じゃなくて感謝を伝えろとよく言われていた。神は懺悔は聞き入れるけれどそれよりも感謝が好きだと、それが事実なのか事実とは異なるのかよく知らないけれど、感謝を口にしろと口酸っぱく言われていた。
階段を引きずられながらこの場所に来た経緯を少しだけ思い出そうとしてみる。郵便ポストに変な手紙が入っていたのは覚えていた。たしか、荘園への招待状なんていう胡散臭い名前だったから捨てたような気もする。お父さんを捨ててどこかに行こうだなんて考えたことはなかったから、開けたけれど、そのうらも設計図を書いていただろうか。
足から伝わる衝撃すら心地良くなってきた時、「泥棒」の彼と弁護士の彼の力を合わせて二足歩行をさせられるようになった僕は、自分で食堂に繋がる扉を開け無ければならないらしかった。
酸素が薄くなったような錯覚。僕はこんなにも臆病だったかと冷や汗をかいた。
「はやく」
急かされる声、ほんものか、本物じゃないかわからなかったけれど僕は勢いで扉を開けた。クラッカーと共に大きな声でテディさん、と呼ばれる。いろんな人の声が重なっていてそりゃあ、大きな声になる。と変に感心した。
＊＊＊＊＊
僕たちは自己紹介をすることになった。歓迎会の前に試合で会っていた人たちもいてその人たちは僕のことを名前も含めて知っていたようだったけれど、僕は職業と見た目しか知らなかった。
「建築家、テディ・ホワイト」
言いなれた言葉。今まで何百回もこの口で、この声帯を震わせて結んだ言葉。これに震えることはなかった。どんなことができるの？とどこからともなく聞かれ、僕は椅子に座った上で、足を内側へと織り込んだ。
「…壁、を、作り…ます」
「壁？それって、どれくらいの高さだい？」
「っと…僕の身長…171cmよりも、高いくらい…です」
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作者名：ちーうし | 作成日時：2024年1月22日 0時
