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早く逃げて!そんなこと、僕が1番よくわかっていた。傷口を抱きながら走るのも、この2人だけの教会も間違えることがないくらい嫌いだ。
「あ、あのっ」
聞いていないのは知っている、僕は自分で作った壁越しに彼に話しかけた。
「ぼ、僕…投降、しますから…少しだけ、お話ししちゃダメですか…」
「………」
「だめ、ですよね!う、うあぁ…そんなに真剣に壁を壊さなくってもっ」
僕は、と言葉を紡いだところでその長い杖が僕の顔を上に強制的に向くように仕掛けた。
「…ふん」
美しい、男だ。パルテノン神殿のように美しい、黄金比の顔。長い手足に、小さな顔。杖を持つ姿がよく似合っていて、僕は今までそんな姿を見逃していたのだと思うと少し勿体無い気がした。
「ぼ、くは…テディ。テディホワイト、」
「テディホワイト……。あの妙な建物を造る…」
「妙…」
彼は僕を脱出口まで押しやる間に、彼自身のことを教えてくれた。そのせいで自分の社交性が高くなったんじゃないかって錯覚をしてしまう。
「あの、遊びに行っても、…や…だめか…」
「来るといい」
その目元が少しだけ笑ったのを見て、僕は白旗をあげた。脱出口の上だったから、彼はすこしびっくりしたみたいだった。…でも、僕は投降することを条件に、彼を話に誘ったからこれは仕方のないことである。
お父さんに会いたい。まだ、あの家で汚く過ごしているのだろうか。
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作者名:ちーうし | 作成日時:2024年1月22日 0時