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「お、父さんは優しいんです、僕にも優しくて、ごはんだって置いていってくれました、殴ったりもする、けどそれだってやりたくてやってるわけじゃないって知ってます。ろくでなしなんかじゃなくて、お父さんは、もっと、」
「…もっと?」
「やさしい、ひとで、酒瓶をわざわざ捨てずに、僕が水を溜めて置けるようにしてくれました。神父様がいうみたいに僕に愛のない鞭を振るったりはしませんでした、愛、愛があって、僕は父に愛されていたんです」
「でもあんた、自分の親父のことバラしたんでしょ?」
ぱち、ぱち、ぱち、と僕は何度も瞬きをした。だから、なんだっていうんだと笑いそうになる。父を殺した、いや、父は死んでいたのだ。だから、すこしでも僕と一緒にいられるように持ち運べるように、ずっと隣に入れるように、小さくして袋に入れていた。日が経つと生臭くなって、段々と虫が這うようになったけれど父の生まれ変わりだと信じてやまなかった。
父は僕のことを愛している、だから、こうやって死後も僕に生まれ変わって会いに来てくれているのだ。それを誰かに否定されるいわれは無い。
イソップも、デミも僕が口を開くのを待っているようだった。そのきらりと光を含んだ瞳が忌々しく思えて、僕はようやく話す口をつぐんだ。
「……でも、そう、ですね。父は、僕のことが好きでした、から」
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作者名:ちーうし | 作成日時:2024年1月22日 0時