ろくでなし (ページ15)

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格差マーーーッッチ！！ページ15

「……あなたって、時々、流暢に喋ります、よね」
納棺師であるイソップカールが久しぶりに声を出したかと思えばそんなことだった。
「ま、まあ」
僕はそれにどう返答したらいいかも知らず、相槌をひとつ。ずずず、僕が紅茶を啜る音だけが響いて彼が早くどこかに行かないかと横目で急かした。
「ど、ういうことだったら…、喋るん、ですか」
「自己紹介…とか、建築の話、は、まあ…本業、ですし」
お互いに喋ることが得意ではないとこんなに重たい雰囲気になるのだと僕は初めて知った。最悪だ、早くこの場から逃げたいのに、空気が重たすぎてそれどころじゃない。ちらちらと辺りを見回して耳を澄ませてみてもこの場所に誰かが来る気配はない。
「やってみて…ください、よ」
「……………こんにちは。私は建築家のテディ・ホワイト。この家は随分と暗くて、物騒だね。私ならそうだな、まずこの柱を変えるね。細い柱を何度も置くせいで小さな部屋を作る羽目になっている。ここはリビングダイニングにも匹敵する場所なんだから、もっとうまく空間を使うべきだ。それに、個々の部屋ももう少し良いデザインがあるね。この邸ごと私に受け渡して1から作り直したいくらいだ。」
「…おお、」
ひとのこえ、僕がそれに振り向くと彼女ははっと気まずそうな顔をした。
「あんた、よく喋るんじゃん」
白髪の混じった茶髪が僕の眼前で揺れる。ああ、ばかをやった。なんで、なんでこんな場所で。部屋に来てもらばよかったのか？いや、そういう話でもない。
「家の話はやっぱ、喋るんだね」
「…そ、りゃあ…。お父さんと、住みたかったので」
「お父さん…ああ、あの『ろくでなし』の？」
「か、勝手なこと言わないでください！」
大きな声が出て、デミとイソップが驚いたように目を見開いたのが見えた。酒を飲みながら、彼女はごめんと軽く謝った。僕は、僕はお父さんが踏み躙られたような気がして頭がくらくらしていた。どうしよう、どうしよう、どうしよう。お父さんに、怒られる。