ろくでなし (ページ1)

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荘園へようこそページ1

すくむ足に、震える身体。まだ僕には早すぎるその場所で1人で泣いていた。かたかた、とみんなが暗号機を解読する音がして、どうして僕はこんなに役に立っていないのだろうとほけほけまた泣く。立ち上がる気力もなかった。
どくん、どくん、と心音がする。緊張のせいか、はたまた『ハンター』が近づいてるのかわからなくて、僕は小さくうずくまって角っこに収まった。
「…あんさん、なにしてはるの」
「あ、あ…」
「もしかして、新しいサバイバーさんでありんすか？」
「そ、そう、です。たぶん、うん、」
後ろから声が聞こえる。京都の言葉だろうか、それにしては訛りがきつくない。声の方向を見ると、白塗りにした芸者が立っていて僕はひ、っと声を出した。
「そんな驚きなさらんと、ちゃんと解読してはるん」
「ぼ、ぼく、頭が悪いから、解読、とか、できなくて」
驚いたような声が上がる。彼女は僕のことを一回殴って、高笑いをした。そうして、逃げない僕を面白がってかまた殴りつける。
「い、いたい…っ」
「動かないでおくんなし。」
彼女は僕を抱き上げる。般若の面をつけた顔が至近距離まで近づいてきてその恐ろしさからまた涙が出た。白い手が僕の頬を撫でて、「あんさんの職業は？」と聞かれる。
解読中止！助けに行く！と全く危機も迫ってないというのに送られてしまったメッセージにくらくらあたまを回しながら、彼女に返事をすることになった。
「建築家、テディ・ホワイト」
「てでぃ…」
「何やってんだよ、お前」
傭兵、の、たしか、ナワーブさんだ。彼が僕を睨みつける。そんな状況、外に出たことのない所謂箱入り息子の僕には全然なかったから、はやく殺してくれればいいのにって思ってしまった。