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「チョン、ジョングク…。記者ね」
ネオン街から外れた暗い路地のある１つのビルの屋上で一人の女が立っている。
にゃーと猫が寄ってきて、
女はその猫を抱きかかえる。
「あなたも猫として産まれたかったわよね。
優雅に、気高く、凛としているような…。
人間になつく猫は、
本物じゃないってすぐバレるわよ」
猫を撫でながら
女は不気味に笑う。
「ねえソウルって意外と面白いのね、」
真夜中でも明るいソウルの真ん中。
「あなたはこの街が好きなんでしょ？」
問いかけられた男は、
「もちろん」
と答えた。
「人間が本望のまま、生きてる。
だからこそ、この国では何をしても罪悪感がない。」
続けてそういうと、
女は鼻で笑った。
「罪悪感？
そんなもの持ち合わせてるようには見えないけど、」
「じゃあ俺は何を持ってる？」
男は、女に近寄った。
「欲望と、慈悲？」
「慈悲ねぇ…信仰心があるせいかも」
「褒め言葉として受け取って」
「ありがたく受けとるよ」
女は猫を撫で続けていたせいで、
猫は腕の中で眠りについていた。
「これからどうするんだ？この街で」
「一ヶ月以内にXを」
「何、X…？」
「X-diamondを取る」
X-diamond。
それは世界でも有数の輝きを放つダイアモンド。
ソウル博物館に寄贈されているが、現在は内部に保管されており、厳重な警備で守られている。
「意外とやる気あるんだ。
観光だけが目的かと思ってた。
…勝算でも？」
男は笑った。
「まったく、何も考えてない。」
「ノープランは強気すぎるね」
「とりあえずインチキ占い師に会ってみるよ」
男はインチキ占い師というワードにぴんときていない様子であった。しかし、数秒して「あぁ〜」と声をあげた。
「あの人もここにいるんだ…、
物騒な街になったね。この街も。」
「あんたがいる時点で物騒なんだけど」
と二人で顔を見合わせて、笑った。
「X-diamondは総動員で、一秒でやるわ」
「総動員？全員集める気？」
「今回は上からの命令だから。」
そういうと目を点にして、
「…上方(かみがた)？」
「でも半分は私の事情ね」
「総動員できるほどの御身分だっけ？」
「私、人望は厚いのよ？」
薄っぺらい会話が成り立つこの二人は誰なのか、
誰も知るよしもない。
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作者名：square | 作成日時：2018年3月19日 15時
