うしさせに拾われました。【浦島坂田船】 (ページ2)

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2話ページ2

「おじゃまします…？」

俺はどうぞ、と言う暇もなく玄関の鍵を閉めた。別に誰かに急かされたわけではないが自分の心にある焦りが誰かに見られないうちに早く鍵を閉めろと警告しているようだった。

「お風呂とか好きに使ってくれてええから」

「え…いいの？」

「廊下の突き当たりにあるから」

彼女の問いには答えず代わりに風呂の場所だけ伝える。彼女は少し考える素振りをした後、「じゃあお言葉に甘えて」とおそるおそる靴を脱ぎ廊下の奥に消えた。

(うわ、上げてしもた)

彼女が見えなくなった瞬間、どっと汗が流れた。未成年を家に上げてしまった罪悪感で心臓がバクバクと音を立てる。

こんな気持ちになったのは、小学生の時に母親の大切な指輪を排水溝に落とした時以来である。あの後母親にこっぴどく叱られたことをよく覚えている。

しかし今起こっている事態はそんなことでは通用しない。警察のお世話になっても全くもっておかしくないものだ。

自分が自分でないみたいだった。

俺は熱い頭を抱えながら靴を揃える余裕もなくリビングに向かう。

カラカラに乾いた喉を水で潤すとほとぼりが冷め、一気に頭が冷静になる。

ようやく一息つき扉の方を見ると壁際に紺色のスクールバッグが置かれていた。クマのぬいぐるみ、プリクラの入ったカードケースに、よくわからないペンライト。それに、いたる所にじゃらじゃら付いている数珠のようなもの。あまりにテイストが行方不明なスクールバッグに思わず気圧される。

数珠のように連結された玉は不気味なほど深い黒色で、体調を崩した時の夢のような気持ちの悪さを感じた。

もしかしてこれは夢なんじゃないかとも考えるが、浴室から聞こえるシャワーの音がこれは紛れもない現実だということを物語っていた。