うしさせに拾われました。【浦島坂田船】 (ページ1)

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1話ページ1

なんとなく拾っただけだ。大した理由なんて無い。

この狭いマンションでこのままこの女と半同棲生活を続ける気なんてさらさらないしただ一時的に家に上げた、言うなれば慈善活動のようなものだ。

別に何か企んでいる訳でも期待している訳でもない。ただそういう気分だっただけだ。

『…帰りたくないの』

公園の街灯だけが頼りの暗闇の中で、ブレザーのリボンをいじくり回しながら彼女はそう零した。

彼女の傍らにはしぼんだスクールバッグが置かれている。ろくに準備もせず衝動的に家を飛び出してきたのがひと目でわかった。

別に放っておけばいい。この子と自分は何の関係もないんだから。関わったってなんのメリットもないし、第一周囲にバレれば社会的な立場が危ぶまれることになる。

このまま何も無かったことにして帰ろう。そう思い、立ち上がる。

しかし、立ち上がった途端に自分の口から出たのは「うちくる？」という四文字であった。