ルーツメイト 第一章 〈A〉

8 ページ8

ザー…
"ザー…"


余計なことを考えたくなくて熱めのお湯をかぶるのに
もやもやとした胸のつっかえが消えない

あぁもう


キュッ
"キュッ"


お風呂場の扉を開けて用意していたタオルで身体を拭いたら
なんだかやけに喉が渇いた

みず、みず…


パタン
"パタン"


お風呂場のすぐ目の前に備え付けてある冷蔵庫からペットボトルを取り出して半分ほどイッキ飲みし

そのままリビングに入る




ふと

置いてある全身鏡がチラリと視界に入って


「えっ」


ボコンッ

ペットボトルを落としてしまった


「……わ、…あちゃー、こぼしちゃった…」


ドッ、ドッ、ドッ


大きめの声で独り言を呟いてみても
胸のどきどきがおさまらない


ドク、ドク、ドク…


……見間違い、だよね？
だって、さっきの…


ぐるりと広くはない部屋の中を見渡しても
もちろん私以外誰もいない


…男の子？男の人？

一瞬だけ見えた、ような気がした。
全身鏡に映る男が

でも


「……気のせい…か」


軽く頭を振ってふきんを取りに行き
こぼした水を拭く。

テテがあんなこと言い出すから
変な幻覚まで見ちゃったじゃないの

とかテヒョンのせいにしてみたり。


「……」


…ドライヤーしてさっさと寝る、
寝よう。とりあえず寝よう









バサッ
"バサッ"


羽毛布団を捲ってベッドの上に身を預けた。


キシ…
"キシ…"


…なんだか最近、やけに近くに感じる
常々思ってたけど
これは一体何なんだろう。

怖いものなのかも知れないけど
不思議とあまり怖くない


「…おやすみ」
"……"


呟いてみても
当然私の声以外は聞こえなかった。








ーーーーーーー









すぅ、すぅ、


…あったかい


そろそろ起きる時間かも
まぶたの向こうが少し明るいのがわかる


でもまだ眠い
あったかい

きもちい


すぅ、すぅ、



……………？


顔に、何か
あったかい空気が



「……」



うっすらと目を開く


目の前には


男の子







……………え？









.









「きゃあああああぁぁぁぁぁっ！！！？」

「っ！！？」


私が悲鳴をあげてベッドからずり落ちると
目の前で寝ていた男の子はびくりと身体を硬直させて目を開き

私を見た


「うわああああああぁぁぁぁっ！！？」


凄い反射神経で飛び起きたので

怖くなった私は咄嗟に枕を投げつけて
そのあとすぐに胸にたくし寄せていた羽毛布団をかぶせた



…ヤられる前に殺るっ
ヤられる前に殺るっ！！

9→←7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す