ルーツメイト 第一章 〈A〉

34 ページ34

警察からの事情聴衆では予想以上に長い時間拘束されることになった。

やっぱり少し前にこの近郊でも似たような事件があったからか
警察の方もおざなりにはできない現状なんだろう









「…溶けちゃってる」


もう部屋の中を片付けても大丈夫だと言われたので
落ちたテレビや傾いた台を直していると
テヒョンがさっき手に持っていた袋が目に入った

中身を見ると私の大好きなアイスクリーム

ちょっと高いから特別な時にしか買わないようにしているもので
これを買ってきたテヒョンの気持ちを考えると
なんだか悲しくなる


「あ。勿体ない」

「…ジミンも知ってるの？このアイス」

「うん。旨いよね」


少し疲れた顔をした彼は
やっと解放されたー、と笑ってベッドの上に腰を下ろした


「…あ、ごめん勝手に座っちゃった」

「ううん。いーの」


ギシ…

私もその隣に腰を下ろす


「あ…テヒョンから連絡きてる」

「……」


事件の当事者の私とジミンは長いこと拘束されていたけど
直接犯人を見たわけではないテヒョンは
最初の方に簡単な事情聴衆があったくらいで
すぐに自由の身になったのだった


[今帰った。警察帰ったら教えて。心配だから]


聴衆が終わっても帰らないと言い張るテヒョンを
遅くなるからと無理矢理帰らせたのは私だけど

……正直、疲れた

連絡は明日でもいいかな、と
テヒョンには悪いけど今日はもうケータイを見ないことにした。


「……テヒョン、君…さ、」

「…ん？」

「…俺の知ってるテヒョンと同じ顔してた」

「…あ…」

「…最初見たとき本当にビックリした」


そうだ
ジミンは今この現状で一番混乱してるはずだ

自分の事にいっぱいいっぱいで
彼を気にしてあげる余裕がなかった


「ジミン、」

「でも話してみてすぐに違うって分かった」

「…え？」

「こっちのテヒョンは俺の知ってるテヒョンじゃない」

「……」

「…俺さ、こっちに来るまでは外でテヒョンと飯食ってたんだ」

「……ぇ…」

「そっからそのままうちに来てゲームしたりしてたんだけど…あいつ途中で寝ちゃってさ」

「……」

「だから俺も寝ようと思ったけどちょっと寒くて。シャワー浴びてからにしようと思って立ち上がって、その時声が聞こえたんだ」

「声？」


ジミンはうん、と頷いて私を見た

35→←33

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す