ルーツメイト 第一章 〈A〉

23 ページ23

次の日

私は大学の旧校舎にある
とある部屋の前で立ち尽くしていた。

うろうろ、うろうろ、

なんせ自分からこーゆー所に足を踏み入れるのは初めてで。緊張する

勉強熱心な生徒ならなんて事ないんだろうけど
私昔から職員室とか苦手だったしなぁ…

と、ノックをすることに躊躇していると


「俺に何か用？」

ビクーッ

「…あ、キム、先生……」


真後ろから声をかけられた

慌てて振り返ると
たった今入ることを躊躇っていた部屋の主が。


「なんか授業で分かんないところでもあった？」

「…あ、あの…」


ど、どうしよう
よく考えれば私相当おかしな事聞こうとしてるんだよね
ちゃんと怪しまれずに上手く聞けるかな
私こーゆー時テンパっちゃうから
あぁどーしよう


「……なんだ？告白ならバレンタインにしてくれるか？」

「…はっ！？ち、違います！」

「ははっ！そんな全力で否定しなくても」


う。私、慌てすぎ

キム先生はかけていたサングラスを中指で軽く押し上げてまじまじと私を見た


「…俺の授業取ってる子？」

「あ、はい…昨日の授業で気になった事があって…」

「へぇ。とりあえず入る？」


そのままカチャリと取手を回してドアを開けると
くいっと首を傾けて中へ促される


「……はい…」


私は大人しく後に続いた









「コーヒー飲める？」


キム先生は私を部屋の真ん中に置いてある一人がけソファに座らせると
壁沿いの戸棚からインスタントコーヒーのパックを取り出して振り返った

そこまで長居をするつもりのなかった私は
コーヒー苦手なんです、と首を横にふって断る


「…で？何が気になったの？」


そのまま１パックだけ開けて備え付けてあったポットからお湯を注ぐと
スプーンでくるくるとカップを混ぜながら
私の向かいにある可動式の椅子に座った


「…あの、昨日、パラレルワールドが存在するかもしれないって話をされたじゃないですか」

「あぁうん。そうだな」

「先生は、信じてるんですか？」

「…うーん…100％信じてるかって言われるとちょっと違うんだけど…」

「……」

「…可能性をね、信じてるんだよな。俺は」

ズッ

「…曇るな」


コーヒーの湯気でサングラスが白くなると
キム先生はためらうことなくそれを外した


「……」

「…何？」


こーゆーのって、サングラスを取ったら予想外につぶらな瞳〜とかなると思ってたけど


「…いえ…」


キム先生はそんな私の予想を裏切って
イメージ通り強面だった

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す