ルーツメイト 第一章 〈A〉

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「ん？」

「Aと話してると気が抜ける」

「……気が抜けるって…」

「あ、悪い意味じゃなくて。なんてゆーか…変に緊張しないってゆーか？」


へへっと笑うから
ちょっとばかり照れ臭い


「…それはどーも…」

「あ、照れた？」

「…そーゆージミンだって照れてるくせに」

「えーなんでわかるのー」


そう言って片手で自分の目元を隠す
…う。不覚にもきゅんとしてしまった…


…でもホントになんでだろ
なんとなく、ジミンの言いたいことは分かる

私もジミンといるのは違和感がない
むしろ自然な感じ
私人見知りなのに

あれかな、同じ不思議体験しちゃったから
仲間意識がそう感じさせるのかな


「…あ、スープ冷めちゃったな」

ズッ

「あ、ほんとだ」

ズッ


こーゆー間合いとか空気感かな？
ちょっと似てるのかも

初対面なのに不思議。


「……ねぇ、こんなときに悪いんだけどさ」

「ん？」

「…トイレ貸してくんない？」

「あぁ、もちろん。どぞ」


さんきゅ、と軽くお礼を言って立ち上がると
迷うことなくトイレの扉を開けた

……なんかやっぱり変な感じ

同じ空間にいる今が変なのか
それとも同じはずの場所で別々の空間に暮らしている事が変なのか

もう何がおかしくて何が普通なのかわかんない


「……」


再び画面をタップする

ネットには"別次元"、つまりパラレルワールドへ行った人たちの嘘か本当かも分からないような証言なんかもあって
藁をも掴む気持ちで見てみるけど
どれも今私たちが体験してるようなのとは違って。

中にはいかにもオカルト好きが考えそうなパラレルワールドへの行き方、なんていうのもあるけど
そのほとんどが小学生の時に流行ったようなおまじないに近い内容。

割と信憑性のありそうなスレッドを見つけても
身体が動かなくなるとか、耳鳴りがするとか、
私は感じなかった身体の異常なんかが書いてあって
知らずため息がこぼれる

…これじゃキリがない


ふと
トイレから何も物音がしない事に気付いた


「……ジミン？」


扉の前へ行って呼び掛けてみても反応はない

……もしかして…

恐る恐る、ゆっくりとドアノブに手をかけて引いてみると
鍵はかかっておらず、そのまま扉は開いた


「……」


トイレは電気だけが点いた状態で
中には誰もいなかった。

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