ルーツメイト 第一章 〈A〉

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「…いいの？」

「…………………はい…」

「…今結構な間だったけど…」

「…少しでも怪しい動きをしたら警察に通報しますから…」

ごくり、
男の子の喉仏が大きく鳴った


「…大丈夫、何もしない」


神妙に頷くので
またちょっと笑ってしまった









「……ここ、」


部屋をぐるりと見回して
ぽろっとこぼれたような声


「…305号室です」

「……」


彼はしばらく突っ立ったまま
信じられない、というように口を半開きにして

それから私を見た


「……夢？」

「って思うよね、わかるよ」

「いやだってこんな、」

「…うん…」

「………物の配置とか、ほとんど一緒なのに…」


戸惑った様子でふらりとキッチンへ向かい
上に取り付けてある棚を開ける


「あ、ちょっと勝手に」

「……このスープも…」

「…え？」

「…これ、昨日俺も買った…」


彼が手にした箱は
私の好きなインスタントのスープ


「…ケータイも、同じだよ」

「…え？」

「……私は、白だけど。この機種だよね」


バッグから取り出して見せると
本当だ、と呟く


「……俺、今朝君が急に部屋にいて、それから急にいなくなって、てっきり心霊現象かと思ってたんだよ」

「…私は幽霊じゃありません」

「ごめん、でも他に何も思いつかなくて…」

「……」


そうだよね
こんなのおかしい
普通じゃない
そう考えるのが当然だ

現に私も一回は白昼夢ってことにして
無理矢理納得したんだから

でも、だったら今のこれは、なに？


「…さすがに二回目となると。夢だとか心霊現象だとか、そんなんで説明しきれないよね…」

「うん………あのさ、」


スープの箱を棚に戻した彼は
私の言葉を遮って
窺うように目を向けた


「…気になったんだけど」

「…なにを？」

「今朝、君が現れて。今、またこうして会って。おかしなことになってるのに、俺たちってお互いが何者なのか全く知らないじゃん」

「……あ」

「俺、君のことテヒョナに聞こうとしたんだけど全然説明できなくてさ」

「わ、私もっ！」


思わず声をあげると
彼は少し驚いた顔をしたあと
微笑みながら、うん、って頷いてくれた

やっぱりこの人は怖くない
こんな状況なのに
不思議


「俺、ジミンって言います」

「…ジミン、さん…」

「ジミンでいいよ」


テヒョンから聞いたことのある名前なら
ああ！って手を叩けたのに。

知らない、名前


「…で、」

「……」

「……君は誰？」

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