ルーツメイト 第一章 〈A〉

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……あんなテヒョン、初めて見た

とぼとぼとマンションまでの道のりを歩きながら
さっきのやり取りを思い返す


「…あー…」


むずがゆい、がしっくりくる。

ときめいたりとか
そーゆーのはやっぱり無いけど
全く何も感じないワケじゃない


「…なんだかなぁ…」


あとちょっとむなしい。

あんな風に自分に正直に生きるテヒョンが
なんだか眩しいよ


「……」


てゆかどーしよ、これから

タン、タン、タン、
マンションに着いてそのまま階段を登る
３階の窓際って位置は良いんだけど階段が辛いんだよな

よっこらせ、っと

部屋の鍵をバッグから取りだし差し込むと
カチャリと気持ちのいい音

そのままドアを開けた








.








「っきゃああぁっ！！！？」

「うわっ！！！？」


すぐ目の前に人の背中があって
驚きで身体が跳ね上がった

その人も飛び跳ねてこっちを振り向く

バクバクバクバク

何この人！？なんでうちの玄関に！？
鍵かかってたよね！？

ザザッと後ずさりながらも
その人から視線を逸らせずにいると


「…あっ！？」

「あ…今朝のっ！？」


見開いてるんだろうけどあんまり開いてない目
よく見れば見覚えのある顔だった


「な、な、なん、なんで、」

「ちょ、待って、違う、落ち着いて、」


バク、バク、バク、

男の子はパーにした手をこっちに向けて
腰を屈めながらじりじりと間合いを詰めてくる

私はそれ以上後ろに下がることもできずに
蛇に睨まれた蛙のごとく固まってしまった


だって、なんで、
また、これは、また、夢？


「ほ、ほんとにっ！俺たった今帰ったところだったんだ！なのに何でか玄関には知らない靴ばっかりあるし、」

「……」

「そしたら急に後ろでドア開ける音がして、」


ドク、ドク、ドク、ドク、

もしこれが初対面だったら
私は今バッグの中にある防犯ベルのボタンを思いっきり押していたかもしれない

でも、私は彼を知っている。
いやほとんど知らないけど。一度は会ったことがある。例え夢でも

それに
今目の前にいる彼の言葉が
嘘には聞こえない

この感じ
今朝、私も体験したものだ


「…と、とりあえず、落ち着きましょう」

「あ、そ、そうだね…」

「「すー、はー、」」

「……」

「……」


お互い顔を見合わせる
……今、


「「…ふっ」」


あ、また

被る息づかいに自然と頬が緩んだ
彼もそうなのか、屈めていた腰を解いて真っ直ぐに立つ


「……とりあえず、中で、お話ししませんか」

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