ルーツメイト 第一章 〈A〉

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いやいや
何言ってんのこの人


「おかしいでしょそれ。305号室は２つもないよ」

「知ってるよ、俺の部屋だもん」

「……」

「……」


じり、

また不安になってきた私は
自然と身体に力が入る。

…この人、本当に信用して大丈夫？
いくらテヒョンの友達だからって、危なくないとは限らない


「……疑うんなら、見てくれば？表札」

「…あ…」


警戒したの伝わったかな
でもそうだ。確認してくれば良いんだ

言われた通りキッチンの前を通りすぎて玄関まで行くと
置かれている靴はスニーカーばかり。

戸惑いつつ扉を開けて確認すると
表札には"305"と表記されている。

………ホントだ

そこから見える景色も、見慣れた高さで見慣れた街並みが見えるだけ。

…じゃあ、
じゃあなんで


くるりと振り返る

さっきから落ちつかない
漠然とした不安がじわじわと私を蝕んでいくようだ


「…………、え？」


そして目に入った光景

あまりに違和感がなくて
一瞬スルーしてしまった

玄関の靴が見慣れたものになっている。
最近買ったばかりのお気に入りのショートブーツ。


「っ」


バタバタッ

キッチンを通って狭いリビングに出ると


「…………うそでしょ……」


黄色い遮光カーテンが取り付けられた
私の部屋だった。


「…な、んで………」


さっきの男の子は？
あの部屋は？

何これ、白昼夢…？


ﾋﾟﾛﾛﾛ…

びくっ

突然、
充電器に挿しっぱなしのケータイが鳴った


「……」


恐る恐る、足を踏み出して
鳴り続けるケータイを手に取る


[着信 :キムテヒョン]


ドクン、


……これは、偶然？

さっきの光景と被るこの感じ、知ってる
デシャヴだ

ううん、それよりももっと強い
ハッキリとある感覚

ケータイの機種も、着信音も、表示される名前も。
全部が一緒なんて


ﾋﾟﾛﾛﾛ…ﾋﾟﾛﾛﾛ…ﾋﾟﾛ、


「…もしもし」


とにかくテヒョンに聞いてみよう
考えるのはそれからだ。

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