ルーツメイト 第一章 〈A〉

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ピンポーン

あ、テヒョン


「はいはーい、と」


玄関へ行って鍵を開けると
カチャリとドアを開けてそのままためらいなく中へ入ってこようとする。


「ちょっと、お邪魔しますの一言も言えないの」

「なにも邪魔しないもん」


私の言葉を気にする風もなく靴をぽいっと脱ぎ捨ててさっさとリビングへ向かう彼の背中を追いかける。

まるで小学生みたいな屁理屈を言うところは昔から変わらない


「そーゆーことじゃないでしょ、ここ一応一人暮らしの女の部屋なんだから」

「おんな、ねぇ…」

ジロリ

大きな目をすがめて私を値踏みするかのような視線を寄越した


「なによその目は」

「まだ着替えてなかったの？もっと色気のある格好してろよ」

「このジャージが一番着心地いいのっ」

「そんなんで女だって主張されてもね。
こっちは何も反応しないから安心しとけー」

「なっ！テテさいってー！」

ボフッ

ちょうど足元にあったクッションを顔面目掛けて投げつけてやった

テヒョンとは腐れ縁というか
小学生の頃からの友達だから付き合いの長さで言えば結構長い

だからこんな失礼な事言われても実はそこまで気にしてなかったりするんだけど


「すぐ手ぇ出すところ直せよー」

「ふんだ」


どうやらこれが私たちなりのコミュニケーションになっているみたいだ









「珍しいじゃん、こんなの見るなんて」


私が着替えに行っている間にこの狭い部屋を物色したのだろう
ついこの間買ったばかりの雑誌を掲げてこちらを振り返った

と同時に
呆れた、とでも言いたげな顔をする

今度はなによもう


「…成果は残念ながら出てないみたいだけど」

「大きなお世話ですー！」


最近ハマった若手女優が表紙を飾っていたから滅多に手に取らないファッション雑誌だけどつい買ってしまったのだ
だから別に服の参考とかに買ったワケじゃない
うん、断じて。ない。


「私が何を着ようと私の勝手でしょっ」

「そうだけどさ。仮にも男と二人で外歩くんだからちょっとはスカート履こうとか髪巻こうとか考えないのお前」

「だって隣歩くのテテじゃん」

「俺じゃ不満かコラ」

「そーじゃなくて。今さらじゃん」

「そんなんだからいつまでたっても彼氏出来ねーんだよ」

「ぐっ…そんなの、テテだって」

「俺は作ろうと思えば作れるんだよ、今必要ないだけで。お前が一番わかってんだろ？」

「……」


この世のモテる人種が憎い

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