ルーツメイト 第一章 〈A〉

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「まぁ、そんな事言ったところで俺は俺で生きてくだけだけどな」

「……」


なんか、頭疲れた…

こめかみの辺りをぐりぐりしていると
キム先生がちらりと腕時計に目をやった


「っと、もう時間だ。次の授業あるから俺もう行くぞ？」

「…あっ、はい！ありがとうございました！」


私は慌てて立ち上がって頭を下げる
そのまま部屋を後にしようとしたら


「あ、君。名前は？」


後ろからキム先生の声がかかった

学生証の番号と名前を伝えると
先生は強面の顔をニコリと綻ばせて


「勉強熱心な子にはちゃんと単位あげたいからな、覚えておくよ」


優しい目を向けてくる。
…えくぼ…


「…宜しくお願いします」


もう一度頭を下げながら
なんだ優しい人じゃん、と
自分の中のキム先生への認識を改めた。
どっかのチンピラみたいとか思ってごめんなさい先生









そのまま旧校舎を後にして
自分の家に帰ろうと門をくぐると


「……あ、」


下り坂へ差し掛かる前にある石碑
その土台に座ってケータイをいじるテヒョンの姿があった

立ち止まってどうするべきか躊躇していると
彼はすぐに私に気付いて立ち上がり
そのままこちらへ歩いてくる


「おせーよ」

「……へ？」

「待ちくたびれた」

「…なんか約束してたっけ？」

「……」


そこで無言になられても。

困りつつも
案外普通に会話していることに安堵する


「…何してたの？お前今日の授業とっくに終わってたろ」

「あぁ…ちょっと先生に分からないとこ聞きに行ってたの」

「はぁっ？」


突然すっとんきょうな声
なんだ文句あるか


「お前が？」

「そーだけど」

「何した」

「どーゆー意味よ！」

ぽかっ

「いて」


失礼なテヒョンなんて無視して行こう
まったくっ

スタスタスタ

「A」

スタスタスタ

「なによ」


早足で坂を下っても
足の長さでテヒョンに勝てるハズもなく。
あっさり隣に引っ付かれる


「俺またAの料理食べたい」

ぐっ…

「キムチ鍋？あれ料理って程でもないでしょ」

「…分かってるくせに」

「……」


スタ、スタ、スタ…

もう意地張ってても無駄だとわかったので
大人しく歩く速度を落とす
隣を歩く足音もそれに合わせてゆっくりになった

チラリと横を仰ぎ見れば
いつも通りの横顔


「……テテは、ずるいよね」


こうやって、歩く速度だって
いつの間にか当たり前になってて


「…ずるい？俺」

「…ずるいよ」

「……そっか」

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