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少し臣さんと店内を回っていると、臣さんの携帯に着信が入った。「どうしたんだ、監督」と言っているのが聞こえたので、電話の相手はいづみ先輩だろう。
「あー、今Aちゃんと一緒なんだ」
臣さんは私の名前を出した。その後「じゃあ言ってみる」などと会話しているけれど、私には何もわからない。
「どうかしました？」
「監督がAちゃんを食事に誘えってさ」
「ええ！？」
「用事あるか？」
私はそう聞かれたので首を横にブンブンと振った。いづみ先輩の誘いとはいえ、臣さんからも誘ってもらって断れるわけがない。
「皆さんがいいならぜひ...」
「勿論いいに決まってるだろ？じゃ、決まりだな」
臣さんはそう言っていづみ先輩に電話で伝えた。またお邪魔するなんて、緊張しちゃうな。いづみ先輩に会えるのも楽しみだけど、男の人多いとどこか緊張と不安があるんだよな。
「じゃあ、Aちゃん。このまま食材買って一緒に行こうか」
「あ、はい！」
そういえば臣さんが食事当番って言ってたな。臣さんの料理が食べられるなんて光栄だな。そんなことを思いながら、私は臣さんの後について店内を回った。
「さ、食材も揃ったし今日は腕によりをかけて料理をしようかな」
「楽しみですね」
「Aちゃんが来るから尚更だな」
またカッコいいことを言う臣さん。すっかり夕方の景色となった外にスーパーの袋を持つ姿も、なんというか絵になる。私はそんな素敵な臣さんの隣に歩いていいのかと思いながらも、恐る恐る足を進める。
「あ、荷物、持ちますよ」
「ん？いや、女の子に持たせられないよ」
どこまでかっこいいんだこの方は。私は「すみません」と言いながら会社用の鞄だけを持って歩く。そういえば臣さんって身長高いよな。
「臣さんって身長高いですよね」
「そうだなあ、190くらいはあるかな」
「高い...」
さっきから臣さんと話す時、見上げることが多い。だからかな、臣さんと話してても昔のことを思い出さないのは。一定距離から離れているように感じるのかもしれない。
「ん？俺の顔になにかついてるか？」
「あっ、いえ...」
何故だろう。臣さんと居ると心が落ち着くような気がする。男の人が苦手だというのに、どうしてなんだろう。
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作者名：かりん | 作成日時：2018年5月8日 14時
