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いい時間になったので私たちは家に帰ることになった。今なら電車も動いてるし、大丈夫だな。駅までは李奈さんもいるし。
「俺、送るよ。こんな時間に帰らせるのは心配だし」
そう言ったのは臣さんだった。どこまでもかっこよくて優しい人なんだなと思った。けど、私と李奈さんはここから反対方向だ。李奈さんが送ってもらえれば、私は大丈夫。そう伝えると、臣さんは困ったような表情になる。
「A、ダメだよ。暗いし危ないから。臣くん、お願いできるかな?」
「李奈ちゃんは俺が送るよ」
「えっ...至くんが!?...いいの?」
「うん。まだゲームのこと、話足りてないし」
なにやら至さんはゲームが好きらしく、ゲーム雑誌の編集にいたことのある李奈さんと話が弾んでいた。万里くんは「俺もついていく」という始末。やっぱり李奈さんってモテるよな。
「じゃあAちゃん、行こうか」
「は、はい...お願いします...」
「A、李奈さん。また来てくださいねー」
「いづみ先輩、また連絡します!」
私はそう言ってMANKAIカンパニーを後にした。ここらか臣さんと二人きりなんて緊張するな。どうしよう。家まで30分くらいあるし、申し訳ないな。
「緊張してるのか?」
「えっと、そう、ですね...」
「ははっ、気を使わなくてもいいぞ」
にこりと笑う臣さん。やっぱり素敵な笑顔だな。その笑顔を見ていると「ん?どうした?」と不思議そうにされる。ああ、いけない。見とれてしまっていた。舞台役者さんはすごいな。
「いえ!大丈夫です!」
「そうか。じゃ、助手席に乗ってくれ」
「はい...」
それからは家までの道のりがあっという間だった。臣さんのお話が面白くて、ついつい聞き入ってしまっていた。MANKAIカンパニーは笑いが耐えないんだろうな、と思った。
「あ、ここです」
「へぇ、大きな家だな」
「そ、そうですかね?」
大きな家というのは自覚していた。そこで頷くことはしない。大きな家でしょ?なんて言えるほどの自信は持ち合わせていない。
「大切に育てられたんだろうな」
「へっ?」
「Aちゃんがいい子だからそう思ったんだ」
「あ、ありがとうございますっ!送っていただいて!」
私はお礼を言ってそそくさと車を降りた。なんだか臣さんと居ると調子狂うな。臣さんは発進するときも窓を開けて「じゃあな」と言ってくれるあたりまたイケメンだなと思った。
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作者名:かりん | 作成日時:2018年5月8日 14時