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幕が開けば、その世界に魅了されるのに時間はかからなかった。何が良かったかとか誰が良かったかとか、そういうレベルではない。演劇の魅力はそこじゃない。
「Aちゃん?どう?ハマった?」
「は、はい!とても!」
「だと思った!Aちゃん好きそうだもん」
李奈さんは頷きながらそう言った。好きそうってどういうことだろう。確かに演劇が嫌いという訳では無いけど、私には演劇好きのオーラが出ているのだろうか。
「私、なんかオーラでも発してました?」
「ううん。私の直感!」
直感。それがこんなに当たってしまうのだから怖い。でも、いいものを見せてもらったし李奈さんには感謝しなきゃ。余韻に浸っていたせいか、周りのお客さんはすっかりいなくなっていた。そろそろ劇場を出ないとか。
「A?」
席を立とうとした時、たしかに私の名前が呼ばれた。声のするほうを振り向くと、よく知った顔があった。
「いづみ先輩!?」
「どうしたの!?Aって演劇に興味なかったよね?」
「上司に連れてきてもらって...」
「どうも!Aちゃんの上司の真島李奈です!」
何故か高校の時の先輩である立花いづみさんがいた。どうしてこんなところで...と思ったけれど、舞台の方から出てきたし、もしかして関係者なのかな。
「MANKAIカンパニーで監督をしてます立花いづみです!」
「ええ!監督さんですか!?」
「いづみ先輩がここの監督...?」
驚いた様子の李奈さんに私も疑問を重ねて告げる。いづみ先輩は「そうだよ〜」と相変わらず可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。
「A、どうだった?興味持ってくれた?」
「うん、とっても素敵だったよ」
「あ!あの!良かったら仲良くしてもらえますか!?」
「え、えっと、もちろんですよ!李奈さん?」
李奈さんはいづみ先輩と仲良くなりたいらしく、連絡先を交換していた。いづみ先輩とは高校時代にかなり仲良くしてもらってたけど、最近は連絡とってなかったな。大好きな先輩だったから、またこれから仲良く出来たらいいな。
「Aちゃんのおかげで、監督さんとお近づきになれたよー!」
「え?あ、はい?」
「あ!そうだ!良かったら2人も打ち上げきます?」
私の頭は?でいっぱいだった。打ち上げとは千秋楽の打上のことだろう。それに来ますかという誘いを受けるとも思ってなくて、突っ立っていることしか出来なかった。
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作者名:かりん | 作成日時:2018年5月8日 14時