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その翌日、私はある程度の荷物を持ってMANKAI寮に向かった。皆さんは暖かく迎えてくれ、やっぱりここの人はいい人ばかりだなと思った。
「Aさん」
ひと段落して、話しかけてくれたのは天馬くんだった。MANKAI寮にはたまに来てたけど、天馬くんと話すのは一言二言でそんなに会話してなかった。
「どうしたの、天馬くん」
「あれは、大丈夫なんすか?」
「あれって...昔のこと?」
私がそう言うと天馬くんは頷いた。天馬くんは昔のことを知っている。なんで知っているのかは分からないけど、親同士が仲がいいし家で耳にしたのだろうか。
「近距離恐怖症、とか」
「大丈夫って言ったら嘘になるけど、前よりはマシだよ」
心配してくれてありがとう、と付け加えて笑顔を作った。天馬くんはそれでも心配そうな顔で私を見ている。年下である天馬くんにまで心配をかけるなんて、申し訳ないよな。
「なんかあったら、俺にも頼ってください」
「ありがとう、そうするね」
2人で話しているとリビングの方から「ご飯できたぞ」という臣さんの声がする。この声が毎日聞けるのかなと思うと少しだけ暖かい気持ちになる。
「...あの!」
「ん?」
「臣さんのこと好きなんすか?」
さらに心配そうな顔になった天馬くんがそう聞いてくる。私の心の中での答えはイエスと出ている。ただ、怖いだけ。本人は当たり前だけど、他の人に言うのも怖いのだ。李奈さんとはそれなりに信頼関係があるから別。
「さ、どうだろうね?」
「...そうっすか」
コロコロと表情を変える天馬くんは、年相応で可愛らしい。私の何が気になるのだろうか。父親同士仲がいいから気にかけてくれているだけだろうけど、天馬くんの興味の対象に私がいるとは思わなかった。
「ほらご飯だって!楽しみだね?」
そう言って場を誤魔化すことしか出来ない私を、許して欲しい。
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作者名:かりん | 作成日時:2018年5月8日 14時