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私は演劇というものをあまり知らなかった。学校の授業で何度が見た程度だった。天鵞絨町にも取材で来るだけで、劇場がある通りに足を踏み入れることは無かった。


「Aちゃん!お待たせ!」

「いえいえ。じゃあ、行きましょうか」


天鵞絨駅で李奈さんと合流し、MANKAIカンパニーまで歩く。天鵞絨町はいつ来てもすごい。といっても、つい最近取材できたばかりだけど。


「ここだよ!MANKAIカンパニー!」

「おー、すごい人...」

「なんていったって、今日は千秋楽だからね」


千秋楽というのは公演の1番最後のことだ。相当人気な劇団だったんだな。女性客が多い気がするけど。


「女の人、多いですね」

「この劇団、男しかいないからね」

「へえ!そうなんですね!!」

「だから女性ファンがつくの」


李奈さんはそう言ってニコリと笑う。ああ、美人だなと思っていると「私は至くん一筋だよっ」と照れた笑顔。李奈さんはどこまでハイスペックなのだろう。そのお顔を至くんとやらに見せてあげたい。


「今日はその至くんという人は出るんですか?」

「それが出ないの。至くんは春組だから」

「春組...そういえば今回は秋組でしたっけ?」

「そう!私のオススメは万里くんよ!」


そう言って李奈さんが指差したのは、ポスターに大きく映っていたかっこいい人だった。隣にいる人もイケメンだな〜。これはファンがつくだろうね。見せてもらった至くんもイケメンだったし。


「楽しみになってきました!」

「いいねいいねー!」


私はドキドキとしながら、劇場の中へと入った。李奈さんのようにハマることは想像出来ないけど、いいものが見れたらいいな。そんな軽い気持ちで、演劇の世界へと足を進めた。

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作者名:かりん | 作成日時:2018年5月8日 14時

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