抱えたもの【伏見臣】 (ページ20)

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助かったのは、マンションの下に他の皆さんが待ってくれていたことだ。今、臣さんと二人きりだったらどうしていいか分からなくてパニックりなりそうだったから、本当に助かった。

「さ、召し上がれ！」

いづみ先輩のその言葉と同時に、目の前にある美味しそうなカレーにありつく。口に入れると程よい辛さと様々なスパイスの風味。堪らない。

「んー！美味しい！」

「でしょ！？作ったかいがある！」

「毎日こんな料理食べられるなんて、皆さんが羨ましいです」

私がそう言うといづみ先輩は「嬉しい事言ってくれる～」と喜んでいた。毎日食べてもいいくらい美味しい。私が幸せな気持ちになりながらカレーを食べていると、目の前にいた人物とばちりと目が合う。

「...幸せそうだな」

「は、はい...美味しいので...」

「いい顔してる」

何やら穏やかな顔でそう言う臣さん。心拍数が上がるのが良くわかる。ああ、こんなにも臣さんのこと好きだというのに、言うに言えない自分が情けない。いや、ここで言うのはおかしい話なんだけど。今度改まって言おう。私も気持ちも伝えなければ。

「なーんか、甘い空気っすね！」

「えっ...」

「あれ？A？焦ってる？」

太一くんやいづみ先輩からニヤニヤとした顔で、見られてしまう。それに釣られて一成さんが「ええ！おみみとAちゃんってそういう関係なの！？」と聞き出してくる始末。

「はは、そうならいいけどな」

「お、臣さんっ...」

あっけらかんとして肯定をする臣さんに私は焦ってしまった。臣さんのこういう何に対してもあまり動じないところ、素敵だけどたまに怖いな。

「臣さん...Aさんのこと好きなんすか...」

「なんだか大人な恋愛ですね。憧れます～！」

話がどんどん大きくなっていく。だけど変に否定すると、臣さんが折角気持ちを伝えてくれたのにそれまでも否定してしまうことになる。それだけは避けたくて、何も言えずにいた。

「ほらほら、カレー無くなるぞ？」

「ああ、本当だ。みんなおかわり食べる？」

どうしようと考えていると臣さんがまた助けてくれる。臣さんは私を見てニコリと爽やかに笑う。ダメだ、どんどん惹かれていく。