抱えたもの【伏見臣】 (ページ18)

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今でも考える。何故あの時、臣さんに過去の話をしようと思ったのか。だってあの話は、今まで誰にも言えなかったんだ。それなのにどうしてだろう。いくら好きになったからと言っても、あそこまで言えたのは不思議だ。

「なんでだろう、本当に」

家でぼーっと考えるのはいつも臣さんのことだ。仕事でも少し休憩になると、臣さんのことを考えてしまう。

「A？準備できたの？」

「はい、大丈夫です」

一人暮らしの許可は呆気なく降りた。20歳になったから、そろそろ自立した方がいいと父も母も思っていたらしい。とはいえ、セキュリティばっちりのオートロックマンションにするという条件付き。場所は李奈さんの住んでいるマンションの近くだ。

「A、引越し屋が来たぞ」

「あ、はい。ただいま」

「あら、早いのね」

何故か父と母も私の引越しを手伝ってくれている。いつもならお手伝いさんにやらせるところだというのに。2人が手伝ってくれたおかげで荷物はすぐにまとまり、引越し屋さんに預けることが出来た。

「引越し先での手伝いは大丈夫ですので」

「そうか。じゃ、また遊びに行くからな」

「何かあったらすぐに電話するのよ？」

「わかりました。では」

意外と心配性な父と母にニコリと笑って、20年間過ごした大きな家を出る。引越し屋さんの車に乗って、30分程度。綺麗なマンションにたどり着く。

「かなりセキュリティしっかりしてそう」

そんなことを思ったのも束の間、私の携帯が鳴る。誰だろう、なんか約束とかしてたっけ。そう思いながら、携帯を見ると相手はいづみ先輩だった。

「もしもし、いづみ先輩？どうしました？」

「あ、A？カレーなんだけどね、今日食べに来ない？」

「あ、今日は引越しで...」

そう言うと、いづみ先輩は「引越し！？一人暮らしでもするの！？」と声を荒らげた。どうしたんだろう。

「荷解き一人でやるつもり？」

「そうですけど...」

「だめ！私も手伝いに行くから住所送って！」

「ええ...わ、わかりました...」

あまりの威圧感に肯定の返事をし、LIMEで新しい住所を送る。ありがたいけど、ちょっと怖いよ先輩。

数十分後、来たのはいづみ先輩だけではなく劇団の人達も来た。こ、こんな大人数で...。なんだか恥ずかしいな。

「A！男手連れてきたよ～！」

「あ、ありがとうございます...皆さん」

その中には臣さんもいて、やっぱりドキリとする私の心臓。静まれ...。