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それから皆さんと少しだけお話して、そろそろお暇することになった。臣さんとはあれから少し気まずいけれど、送ってくれる人に対して失礼な態度をとるわけには行かない。
「A、また来てね！カレー食べに！」
「はい、連絡しますね」
「Aちゃん、またね〜」
「ありがとうございました！」
皆さんに挨拶をして、MANKAI寮を出る。寮の前には臣さんが車を停めて待ってくれている。天馬くん、いるかな。
「あ、Aさん！またパーティで」
「天馬くん！またね！」
噂をすればなんとやら。天馬くんは顔を出してくれて、見送ってくれた。そういえば前お邪魔した時は、なんで気が付かなかったんだろうな。
「Aちゃん、乗らないのか？」
「あ、今行きます。それでは皆さん、また！」
私は皆さんにもう一度挨拶をして、臣さんの乗る車の助手席に乗った。先程の緊張がまだ抜けない。どうしよう。
「さっきはごめんな」
「い、いえ！大丈夫です...」
やっぱり少し気まずい。どうしようかな、何話せばいいんだろうと思っていたら、信号に引っかかる。
「Aちゃんは、いつから近距離恐怖症なんだ？」
「ええっと、小学生の時からです」
「そっか...何があったかは聞かないけど、辛いだろ」
私を気遣ってくれる言葉に、優しい人だなと改めて感じる。臣さんだから話してしまおう。何故か私のことを知ってもらいたいと思った。
「実は、小学生の時に誘拐されたんです。私」
「...っ、そうだったのか」
「あんまり記憶には残ってないんですけど、その時に掴まれた手だけは鮮明に覚えていて」
それから近距離恐怖症になったことを、詳しく臣さんにお話した。臣さんは私の話をひとつも遮らずに聞いてくれた。お付き合いした人とうまくいかなかった事まで、お話してしまった。
「辛かっただろう」
私が話終えた時、ちょうど赤信号で車が止まった。臣さんは辛そうな表情で私にそう言った。赤信号のせいで、臣さんの顔は真っ赤に見える。それがまた素敵だった。こんな時にそんなこと考えるなんて不謹慎だけど、そう思ってしまったのだ。
「でも、さっき臣さんに手を握られた時は嫌な思いしませんでした」
「...え、そうなのか？」
「むしろ、何か熱くなるといいますか...」
そう言うと臣さんの顔にさらに赤みが増した気がした。いや、きっと赤信号のせいだろう。
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作者名：かりん | 作成日時：2018年5月8日 14時
