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食事を終えて、せめてものお礼と思い片付けを手伝うことにした。臣さんは片付けの手際も良くて、凄いなと改めて感心する。
「ああ、Aちゃん。それはこっちに」
「あ、はい！」
片付けとか準備とかあんまりやったことのない私は、たどたどしく手伝いをする。役に立てないのが申し訳ないな。
「Aちゃんはこういう事、あまりしないだろ？」
「はい...お役に立てず、申し訳ないです...」
「いや、手際良くて助かるよ」
お世辞でもそう言ってくれて、ありがたいな。臣さんはどこまで優しいんだろうか。
「いえ、そんな...」
「そうだ、今日も送っていくよ」
「ええっ、大丈夫ですよ？」
そう断りを入れたが、臣さんは引かなかった。いつから聞いていたのか、いづみ先輩が「A〜、そういう時は甘えていいんだよ」と言ってくれる。自分が言われた時は遠慮するくせに。と先輩に失礼なことを思いながら、臣さんに送ってもらうことをお願いした。
「Aちゃんは女の子なんだからな。あ、それともほかのやつの方が良かったか？」
「い、いえ！臣さんが、いいです…」
「...そ、そうか。じゃあ、片付け終わったら送るよ」
言った後に思った。私なんて恥ずかしい事言ってるんだろう。焦りすぎて変なことを言ってしまった。わたわたしていると、手に持っていたグラスを落としかける。
「わっ...！」
「おっと、危ない」
落としかけたグラスを拾い上げてくれる臣さん。ナイスキャッチ、と思っている場合じゃない。
「臣さん！すみません！」
「俺は大丈夫だ。怪我とかないか？」
そう言って臣さんは私の手を取る。瞬間になにかに打たれたように胸が高鳴る。私は恥ずかしさのあまり、硬直してしまう。
「あ、あの、す、すみません...」
「ああ、悪い。触られるのとかダメだよな」
「え、いや、そういう訳では...」
臣さんは申し訳なさそうに私を見た。たしかに触られるのは無理だけど、臣さんに触られても平気だったのはどうしてだろう。ちょっと気まずい空気のまま、片付けは続行された。私の鼓動は早いままだ。
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作者名：かりん | 作成日時：2018年5月8日 14時
