抱えたもの【伏見臣】 (ページ11)

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MANKAI寮まではあっという間だった。臣さんと一緒だったせいなのか、食事が楽しみなのかは分からない。否、両方なんだと思う。

「A～！いらっしゃい！」

「いづみ先輩！こんばんは！」

「監督はAちゃんのことが好きなんだな」

MANKAI寮の前で待ち構えていたいづみ先輩を見て、臣さんはそう言った。いづみ先輩は高校の時から私のことを気にかけてくれていた。多分、私が近距離恐怖症なのを打ち明けたからだと思う。

「そりゃもうね！Aは私の大事な後輩だから」

「いづみ先輩、ありがとうございます！」

「いーえ！じゃ、入って入って」

私はいづみ先輩の案内の元、2回目となるMANKAI寮へ足を踏み入れた。やっぱり素敵な空間だな。

「あ！Aちゃんだ～！」

リビングに入ってすぐに出てきたのは、一成さんだった。この間のことがあってか、距離は少しだけ取ってくれている。なんだか申し訳ないな。

「こんばんは、一成さん」

「この間はごめんね～？でも、Aちゃんと仲良くなりたくてさ！」

「あ、LIMEでしたよね！いづみ先輩に聞いてくれたら…」

「マジ？やったね！カントクちゃん、後で教えてね～」

一成さんはいい人そうだし、話していても楽しい。こういう男性と関わることは社会に出てから増えたけど、まだ慣れないな。

「A、いいの？」

「はい！私もそろそろ近距離恐怖症克服しなきゃですし」

「そうか。じゃあ、俺にも教えてくれないか？」

私はその発言に驚きを隠せず「ええ！？」と大きな声を出してしまった。まさか臣さんにLIMEを聞かれるなんて、思ってもみなかった。どうしよう、なんか緊張する。

「い、いいですけど...私のなんか...」

「ほら、料理したいって言ってただろ？わからないことがあったらなんでも聞いてくれ」

「あ、ありがとうございます！」

「買い物にも付き合うぞ」

臣さんはそう言って笑ってくれる。なんて頼りになる人なんだ。買い物にまで付き合ってくれるなんて。もし料理をするようになったら、お願いしようかな。

「じゃあ、臣くんにも私から教えとくね」

「お願いします...」

「よろしくな！」

たくさんお友達が増えてなんか嬉しいな。専門学校に行ってる時は、勉強と就活で忙しくてあんまり友達できなかったし。いづみ先輩に感謝だな。