Music 9th ページ11
「カントクさんに
『夏組団員になりませんか?』
って、言われて、迷ってるんでしょ」
「なんで…」
「なんでって…何年一緒にいると思ってるの?
どうせ、カズ兄のことだから、大学や叔父様、叔母様のことも考えてるんでしょ」
…だから、そんなに迷ってる。
私が言うと、カズ兄は黙ってしまった。
無言は肯定だ。
兄は確実に迷っていて、例には挙げなかったけれど、私もその中に入ってる。
「……私はね、カズ兄。カズ兄のやりたいようにすればいいと思うよ」
「A…」
「だって、大好きなカズ兄だもん。私は、音楽しか許されない。でもカズ兄は違うじゃん。美術も演劇も…それこそ音楽だって。選ぶ権利が与えられている。
あーあ、カズ兄と一緒にMANKAIカンパニーで過ごしたいなぁ…! 一人気に食わない奴もいたけど、とてもいい人達だった。私を認めてくれた。
天才の詩鳴Aじゃなくて、ただの小学六年生の詩鳴Aとして、彼らは見てくれるから」
ちらりと横にいるカズ兄の顔を覗くと、目に、水を少し貯めていた。
一瞬視線が交差し、私はカズ兄の暖かい腕の中に包まれていた。
「ありがとう、A。
俺さ、ずっと他人に合わせるしか出来なくて、チャラい俺もガリ勉の俺も認めてくれたのは両親とAだけだった…」
少し肩が震えていることから、カズ兄は泣いている、と判断し、背中に腕を回す。
「あの人たちは…俺のこと…」
「大丈夫。認めてくれる。見てくれる。本当のカズ兄を…三好一成を、受け止めてくれるよ」
「……俺、なんで妹に助けられてんだろ…情けない…な…」
「カズ兄はかっこいいよ。私を私として受け入れてくれた初めての人だもん。ガリ勉だろうとチャラ男だろうとカズ兄はカズ兄。それは変わらないんだよ」
仲良く二人で帰った私たちは、遅くなってしまったので、叔父様、叔母様に心配され怒られた。
今度はしっかり歩幅を合わせてくれて、曇っていた表情も、明るくなっていた。
「母さん、父さん」
「叔母様、叔父様」
「「話がある/お話があります」」
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