Chapter eightytwo ページ35
……ついに来てしまった。
この時が。
キーンコーンカーンコーン、と、チャイムが鳴り響く。
その瞬間、たちまち教室中はわいわいがやがやとしてくる。
…お昼の時間だ。
いつもなら、翔さんが僕の教室まで迎えに来てくれて、そこから中庭か屋上で食べる。
この時間が、学校で一番楽しみな時間なのに。
この時間のために学校に来ていたもんなのに。
今はそれどころか、一番来て欲しくなかった時間だった。
翔さんに、どんな顔をして会えばいいの…？
信じたくない。
翔さんが、僕以外の子と────。
そんなはずない。
だって、恋人は僕なんだもん。
きっと、考えすぎだよね…？
そう思っていたら、翔さんが来た。
覚悟を決めて、お弁当を持って翔さんのところへ向かった。
「今日は天気いいよ。屋上で食べよう？」
「…うん」
翔さんが優しく微笑む。
…いやだ。
この微笑み方。
あの女の子に見せていた微笑みと同じだ。
僕の特定の微笑みだったのに。
取られた気がして、ショックだった。
屋上に着いて、無言で蓋を開ける。
「…二宮、なんかあった？」
「…え？」
「さっきから何も喋んないで。いつもだったら楽しそうに話してくれるじゃん？どうした？」
…鋭い翔さんは、すぐに気がついた。
「…なんでもないよ」
「何かあるなら、言ってよ」
「なんも、ないってば」
翔さんと話したくなくて、言い方が少し冷たくなってしまった。
「俺にはそう見えないな」
「…っ、ないってば、！」
「………何。そんなに俺には話したくないわけ？」
「……何…どういうこと…」
「……もういいよ。今日のお前、なんかいつもと違うし、ため息ばっかついてるし。そんなの見てたら心配するだろ」
「な……。」
翔さんの優しさが伝わる。
だけど。
どうしてもあのことが離れない。
翔さんに聞きたい。
…でも、聞くのが怖い。
こんなんで怯えてる僕を殴りたいくらいだ。
Chapter eightythree→←Chapter eightyone
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まろん | 作成日時：2018年9月3日 23時
