トアルハルノヒ【吉沢亮】

episode7_ ページ7

◎現在に戻ります◎



少し昔話をしすぎたのかもしれない。


彼女と出会って、こんな日常が続いたのは14のとき。

すなわちもう10年ほどたとうとしているらしい。


あっという間に時はすぎるもんだな、と改めて思う。


俺は彼女の後押しもあってちゃんと俳優になれた。


でもその事を彼女に直接伝えたことは無い、というか彼女と卒業式以来会えていない、というのが現実だった。



｢吉澤さん、赤と青と、どっちがいいですか？｣


衣装さんがネクタイを持って来てくれる。


『えーっと、青にしようかな』



彼女か好きだった色は多分青色だったな。



元気にしてるかな。



今何してるんだろうか。



同窓会がなかったわけじゃないけど、仕事の関係とかであんまり行けない。



会えるかもしれない、と期待して行った成人式は、彼女はどうやら地元の方に参加していたようで、俺らの地元には姿を見せなかった。



会いたいな、


ぼんやりとそんなことを思う。



4月といえば彼女に出会ったあの14のハルを思い出すんだ。



毎年、毎年こうおもって10年すぎたらしい。



｢吉沢さん、スタンバイお願いします。｣



スタッフの方がやってきて、了解です。と答える。



さあ今日も頑張ろう。


彼女はきっと俺を見てくれている。


なんだかそんな気がして、頑張れる感じがした。


『…よし。』


気合を入れ直して現場へと足を向かわせた。




｢吉沢くん、今日絶好調だったね。よかったよ。｣


帰り際に監督さんに声をかけられる。


｢なんかいいことでもあった？｣


『いや…特には…』


｢そう？まあこの調子で頼むよ。｣




そうか、彼女のことを思い出したからかもしれない。


なんて気づいたのは家に帰ってからだった。

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