【文スト】鼠の憫笑

鼠と空腹 ページ6

.

未だに噎せている敦に内心呆れながらも、優しく背中をさすってやると、" ありがとうございます、大丈夫です " となんとか呼吸をとりもどす敦。

そんな敦とAを置いて、先程川に流れていた男がぱちりと目を覚ました。




｢...はて。｣




目を覚ましたか、と思えば、当たりを見回し首を傾げる男。少年というには大人びていて、男性よりは幼い。少し周りと違うところがある、といえばその顔(ルックス)の良さと服装、所謂容姿だ。
目は大きく、それでいて少しつり目であって、肌は白く口は美しい形をしている。鼻も通っていて、なにより輪郭が綺麗だ。
身長も高く、痩せ気味だからか筋肉も美しく見える。

Aの双子の兄も世間で言う " 美形 " に入る顔なのだが、そんな兄にも匹敵するほどの顔の良さ。
さぞかし周りにチヤホヤされていきていたのだろうな、と心の中で言うAをよそに、男はとある問題発言を述べる。


｢.. ちぇっ、君たちかね、私の入水を邪魔した者は｣

｢｢ ... はあ？｣｣


敦はともかく、あまり顔に出さないAまでもが呆気に取られる。
それも無理はないだろう、助けてやろうという善意でした行動を " 君たちのせいで入水に失敗した " と遠回しに愚痴られたのだ。



( ... なにこの人。
こんな日本人が居るのか、なんと無礼な。)



元より露西亜の中でも礼儀やマナーに厳しいAは、そんなことを言う男に呆れを通り越して苛立ちを感じていた。
日本ではこのような光景は普通なのであろうか。
親切でしてもらった行動にはお礼をして感謝を述べることが当たり前だと思っていたのだが。

裏社会で生きているAでもその点、マナーだとか礼儀だとかには一応人並みに弁えているのに。

Aが苛立ちを感じていることに気づいたのかは知らないが、敦が " 入水に失敗って、どういう事ですか？ " と話題を変える。

孤児院で人の顔色を伺い生きてきた彼にすれば、人の苛立ちだとか不機嫌さだとかはひと目でわかってしまうのだ。それはそれはもう、彼の特技だと言ってもいいくらいに、要は敦は人の顔色に過敏なのだ。




｢知らんかね？入水、要は自i殺だよ｣



開き直りそう述べる男。
そんな男にすかさずAが、" 周りを巻き込み自i殺をするだなんて迷惑極まりないですね " と突っ込む。

すると男は " それに関しては申し訳なく思っているよ、なぜなら私の信条は清く明るく元気な自i殺だからね " と答えた。

鼠と太宰→←鼠と男

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す