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瞼が持ち上がり、色素の薄い瞳が現れる。
ゆっくりと何度が瞬きをしてから、大きく目を見開いた。
「…え、先生!?」
がばっと布団から起き上がり、目を丸くして俺を見る桜井。
何となく気まずくて、ふいと視線を外した。
山「…おはよう。もう朝だぞ」
「え、あ、おはよう。起こしに来てくれたんだ?」
ググっと背伸びをしながら、こっちに目線を流す桜井。
その目はやっぱり、充血していて。
山「…あのさあ、桜井。なんかあったのか…?」
「えっ?」
ぽかんとしてから、思い出したかのように顔から表情を失くし、けどそれも一瞬で、すぐに笑顔を浮かべた。
「何でもないよ」
ヘラヘラと浮かべる薄っぺらい笑み。
それはまるで、自分の心を見せないための仮面。
山「そんな訳無いだろ…ちょ、おいっ」
「ほら、俺着替えるから先生出てってよ」
桜井にぐいぐいと背中を押され部屋の外へ追いやられる。
抵抗しようにも、この細腕のどこからそんな力が出るんだというくらい強い力で押され、呆気無く廊下に出されてしまった。
山「桜井…!」
ピシャッと襖が閉められる。
襖が閉められるとき一瞬見えた桜井の顔は、いつか見た、親とはぐれた迷子のような、途方に暮れた表情をしていて。
「………ごめん、先生。先行ってて。後で行くから…」
襖を隔てた向こうから、少し震えた声が聞こえる。
俺は、何にも出来ないのか
自分の生徒が……桜井が、苦しんでいるのに。
胸が、ジクジクと痛む。
唇を噛み締め、何も出来ない不甲斐ない自分を呪った。
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作者名:名無し64299号 | 作成日時:2019年2月7日 4時