確認 ページ28
「……お前も粋なことをする」
Aの隣でカーズが呟く。
先程の一部始終をどこからか見ていたようだ。帰り道にて、指先に降った雪の結晶を眺めながらAは口を開いた。
「仕方ない
記憶を消したのは形兆で24万と392人目……慣れた事だと思っていたのに
……私も情緒が豊かになったんだな」
今思い返せば感慨深い。
ジョナサンには無骨な顔しか見せてこなかった故、今の自分に会わせたいと心から思う。
今なら、彼の前でも素直になれるだろうか。
「本当に……初対面時のお前が懐かしいほど、変わってしまった」
「過去の私の方が良いか？」
「どっちも良い」
冷たい風が2人の頬を撫でる。言葉を発す度に白い息が漏れ、宵闇に消えていった。
並んで夜道を歩く。カーズの長い髪が静かに揺れている。
「シーザーもお前に結婚を申し込むとか言っていなかったか」
「こっそり消しに行ったよ
だから彼は彼で、家族が増えたらしいけど」
駄弁っている間に家に着き、コートを脱ぐ。家の中の温度は快適だ。いつも居心地がいい。
「……俺がお前に恋愛感情を抱いていたらどうする」
リビングに降り立ち、ソファに座ったカーズがそう聞いた。
「探りを入れるのは情けないぞカーズ
その程度、既に理解している」
コーヒーカップを吉良から受け取り、Aが言い返す。会話を聞いていた吉良は思った。
(え……分かっててやってるの……？)
「ならばなぜ俺の感情は消さない？」
「お前が幸せな家庭を築けるとは思えん」
「俺だって生物だ
築けるさ、その気になればな」
カーズが、隣に座ったAの腰に手を回し、引き寄せた。
顔が目と鼻の先まで迫る。赤い瞳を覗き込み、カーズは囁く。
「……だが、お前が居ないとダメだ
お前じゃなけりゃ、このカーズの隣は務まらない」
暫く見つめあった後、拍子抜けした顔でAが口を開いた。
「何言ってるんだお前
常に居るだろ、隣」
「……確かにぃ！」
「それより実験に付き合え、素材が足りなくなった」
「いつも思うが俺の腕で良いのか？」
「むしろ上物過ぎるほどだぞ、素材として使うのが惜しい」
「いくらでもやるよ」
「……今のプロポーズって気付いてるのか？」
「いや……絶対気付いてない、両方」
「ついでに僕達の存在にも気づいてないです」
「あいつら一番強いんだよな？メンタル面でもそうなのか？」
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(名前)山葵(プロフ) - この小説と作者さんにに感謝 (2022年4月7日 18時) (
レス) @page50 id: 5816bc8f92 (このIDを非表示/違反報告)
納豆巻き - 番外編も楽しく読ませていただきました。こんなに面白い作品に出会えて良かったです。本当にありがとうございました。 (2021年5月20日 9時) (レス) id: 640a457bd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：1匹のメタリカ | 作成日時：2020年10月31日 9時
