想い人 ページ6
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あの時の笑顔を間近で感じたい。
窓際に肘をついてぼーっと空の遠くを見た。
視界にはあの城が写る。
「あぁ。もう。」
…王子に恋するなんて馬鹿げてる。
妙にギラギラと私を照らす太陽に嫌気がさして、ベットに飛び込んだ。
天井を見る。
「馬鹿だなぁ。私。」
恋なんてした事がない。
デイモンは古き良き友人であって、恋仲なんて柄ではなかった。
お母様なら。
「お母様」
「どうしたの?」
「…恋とは何ですか?」
「…敬語は外していいのよ。ここはうちなんだから」
私から何か悟ったお母さん。
化粧の手を止めてこちらを向いてくれた。
そのままで綺麗なのに。
そうねぇ。とお母さんが頬に手を当てた。
「誰かの事しか考えられなくなって、その人を手に入れたいと思うことよ」
「手に、入れる?」
「そう。難しいものよ。両思いなんて奇跡に程近いのだから。」
奇跡。その一言が重く私にのしかかる。
「私は、どうすれば良いの。あの方はとても、私の手には、届かない。」
「…おいで。A」
声を震わせてしまった私はお母さんの胸に吸い寄せられる様に収まった。
目の前は緩んで何も見えない。
ただただお母さんの強く抱きしめてくれている力が私を支えてくれた。
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作者名:白猫とみせかけてアルビノの黒猫 | 作成日時:2018年8月27日 22時