野球が好き、ただそれだけ

ムービングボール ページ7

西川選手が帰った後も、バッティング練習を2時間ほど続けた

そして私は、西川選手に言われたとおりテーピングをしてもらった

練習を終えてからじわじわと手に痛みを感じる

でも、練習して手が痛くなった

それはしっかり練習をした結果であって、私にとっては嬉しい痛みだった

私が部屋にいると

コンコン、

誰かが部屋の扉をノックした


「はい…」


「あ、開けていい？」


「はい…」


誰だろ？

ガチャッ_


「Aちゃん、今ひま？」


「はい…」


そこにいたのは亮さんだった


「キャッチボールせん？Aちゃんの球、受けてみたくて」


「い、いんですか？」


「うん」


「よろしくお願いします！」


この機会に亮さんにいろいろ教えてもらおう

私たちは、室内練習場に移動した


俺がAちゃんの球を受けてみたいと言ったのには、理由があった

それは、YouTubeでAちゃんの高校の時の練習試合の動画を見ている時だった

試合中に投げたその1球は、ど真ん中のストレートなのにキャッチャーが取り損ねた

ただ取れなかっただけなのかと思ったけど、俺はそのボールになぜか違和感を感じた

だから、実際に受けてみようと思ったのだ

キャッチボールを始めるとその違和感にすぐに気づいた

Aちゃんのボールは、不規則に手元で変化するのだ

もしかしてこれは、ムービングボール…

わからない、今までにムービングボールなんて受けたことがないから

けど、手元で不規則に動く、ということはムービングボールなのだろうか

Aちゃんはたぶんムービングボールを投げていることをわかっていないと思う

俺はこのボールがムービングボールなのか確かめたくて、コーチを呼びに行った

コーチにそれを伝えると、実際に捕ってみると言った


「Aちゃん、コーチにボール投げて」


「は、い」


Aちゃんはそう言い、コーチに向かってボールを投げた

それを受けたコーチは


「これムービングボールやな。俺もこんなボール受けたんはじめてや。このボール使えるな」


「でも、Aちゃんは、意図的にこのボールを投げていないと思います。それに、自分がムービングボール投げてることもわかってないと思います」


「うん、わかっとる。今のままでももちろん使える。けど、これを意図的に投げれるようになったら？」


「めっちゃいいピッチャーになると思います」


けど、意図的に投げれるようになるには1つ問題があった

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