三度目の正直【黒】

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またねって
家が反対方向のアキに手を振る。


夜風に当たりながら夜道をひとりで歩くと、なんだか自分が酔っ払ってる気がしてくる。

まぁ、いつもより呑んだし多少は酔ってるんだろうけど。




星見えるかな、とか思ってふと空を見上げると
そこには満開の星空


…なんて、ロマンチックな光景があるわけもなく。
雲のせいか、心なしか月すらも少し隠れてる。





「月が綺麗ですね、…なんつって。」






この口説き文句、こんな天気の日には使えないじゃないかって
どっかの少女マンガに向けて心の中で呟いてみるけど
別にマンガの世界だもんねって自己解決。



それからもう一度、空を見上げてみるけど
やっぱり星は全く見えなくて。


そういえば一年前もこんな空だったかも、って思い出す。




そしたらなんだか、無性に泣きたくなって。
鼻の奥が少しツンとする。


夜道に女がひとりで泣くとかなんだそれって思うと同時

最後の日くらい泣いてしまっても、って。







明日には、全部ちゃんと

思い出にするから。









「A、…愛してる。」

「え、なに急に！」

「いや、言いたくなったから。」

「んふふ、もう1回言って！」

「やだ。」

「なんでよー！もう1回！」

「うるさいって。」










「…っ、」





今日だけ。









思い出に浸ってもいいよね。

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