きみと、空と、絵空事。【T.Y-M.T】 (ページ12)

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春ページ12

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扉をあけると、教室には既にほとんどの生徒がいた。
クラス替え初日にみんなどこか浮き足立っているのはわかる。

廊下に大きく張り出されたクラス替えの名簿の前では、
まだ何人か誰と誰が同じクラスだとか、盛り上がっていた。

何組で誰と一緒なのか、当然既に知っている私は名簿をスルーして教室に入り、
とりあえず出席番号順に並べられた自分の席に座った。

(増田くんは……？)

周りを軽く見渡すと、

ちょうどそのタイミングで教室に増田くんが入ってきた。

(わっ……ーーー)

男子にしてはすこし長めのストレートの髪、

スッとした鼻筋と、白い肌。

首もとですこし緩めたネクタイと

ほかの子もしてるように、わざと少し着崩したまさに高校生な着こなし。

(さっきは、遠かったし…後ろ姿でよく見えなかったけど)

(…ああ、増田くんだ。間違いなく。)

心の奥がぎゅっとなった気がした。

同じように気づいたクラスメートの男の子が、増田くんに声をかける。

『あれ？増田お前遅くね？』

「さっきまで他のクラスのとこいってきてた」

『また同じクラスだな！』

「えぇ…マジかよ。」

『なんだよその反応ー！』

くくっ、と口元を手で押さえて
とても楽しそうに増田くんは笑った。

「うそうそ、冗談だって。ほんと腐れ縁だよなー、俺ら。」

彼の表情のすべてが、鮮烈に映る。

ほんとうに、ほんとうに
優しい笑顔をする人なんだなあって。

(…って、なに見とれてるんだろうか)

いくら初恋の人と言ったって、相手は私より(本当は)年下だし。

なにより、そんなのんきなこと考えてる場合じゃないのに。

(目が離せない、なんて。一番浮き足立ってるのは私かも。)

視線をそらしたところで、チャイムが鳴り響いた。
廊下にいた子、まだたっていた子たちが慌てて席に座る。

『…はーい、席着いて。出欠とりまーす。』

数年ぶりの担任が、名簿を開きながら教室に入ってきた。

聞き覚えのある名前をぼんやりと聞きながら、
私は考え事にふけっていた。

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