記憶喪失の君と幼馴染の僕 (ページ20)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:16,986 hit

19 ページ20

.

ベクくんには言ってしまおうと思った

本当はお箸が使えること

ドさんと初めて会った気がしなかったこと

目を覚ますのも奇跡なんて言われる事故で記憶がないと知ったこと

それに、

ドさんに対するこのどうしようもない気持ちも。

全部全部誰かに言いたかった

誰かに聞いて欲しかった

誰かに、

答えを出して欲しかった

BH「A？」

ごめんねベクくん
いきなり泣いて困るよね

でも何故だか言葉にならないんだ
声にならない、の方が正しいかな？

きっとここに居るベクくんもチャニョルくんも、記憶があった私とは友達かなんかなんだと思う

だって、初めて私をみた時の顔がみんな同じなんだもん
一瞬驚いて、悲しそうな顔をするんだ

どうしてそんな顔するの？
笑ってよ。

そう言いたいのに言えないのは、

自分のせいだって分かってたから

BH「ギョンス居ないから悲しくなっちゃったかあ？よしよし。おいでAちゃん」

ふわぁってベクくんの香りがする

ドさんが居ないからじゃないよって言いたいけど、まだ声にならないみたい

私なりにありがとうを伝えたくてベクくんの背中に手を回すと、ビクッと体が強張った

BH「ごめん。俺も泣きそうだわ」

って言って私の肩で本当に泣いちゃうもんだから、何で二人して泣いてんだろうって可笑しくて小さく笑った

BH「ヤー笑うなー。もらい泣きだバカやろー…」

『ふふ。おいでベクちゃん』

BH「！、はぁー！なんか久しぶりに泣いたからスッキリした！」

『私も』

BH「よし！じゃあトランプやるか！」

『私、遊び方分かんないよ？』

いーからいーから！って持ってきた袋からトランプを必死に探してるベクくんを見て、

頭の中の走馬灯が駆け出した

『ふふ笑』

優しいベクくんになら全部話そう

さっきの話も、

トランプの話も、

ベクちゃんベクちゃんって呼んでたあの懐かしい記憶がふと蘇った話も。

全部全部。

.

.

『あのね、ベクちゃん！』