3話 ページ4
side 北人
日が暮れてきて、
空がオレンジに染まり始めた頃。
1つの小さな教会を見つけた。
ホク「……あそこなら休めるかな」
何をするにしても、
とりあえずまずは休まなきゃ。
大きな扉を開けると
そこには参拝者用の席と祭壇があって、
祭壇の裏は色とりどりのガラスが埋められ、
その1番上にはイエス・キリストの絵が
大きく描かれていて
ドーム型の天井も埋め尽くしていた。
ホク「ここなら、
すぐに力も溜まりそうだし。」
A「……綺麗な夕陽。」
ホク「ここから見る夕陽は確かにとても綺麗。
でもね、天界から見るともっと綺麗だよ。
朱色と黄色とオレンジの絵の具を
上から零したみたいに広がっているんだ。」
A「ふふっ。いつか見てみたいわ。
そんな綺麗な夕陽。」
あれ、ボク、今、誰と……
後ろを振り返ると
真っ黒なドレスを身に纏った1人の少女がいた。
その少女は今まで見た人間の中で
いちばん綺麗だった。
銀と言うよりグレーに近い腰まで伸びた髪。
透き通るような白い肌。
長いまつ毛。綺麗な瞳の色。
柔らかく笑うその少女に
僕は一瞬で目を奪われた。
ホク「……ボクが、見えるの?」
A「えぇ。
傷ついている迷子の天使さん。
お名前は?」
ホク「……ホク、って言う名前」
A「可愛らしいお名前ですね。
私はA。どうしてこんな所にいるの?
その怪我はすぐに治療しなきゃ……」
ホク「あ、えっと、……」
A「もしよろしかったら
私のお家に来ない?
何も出来なくてもせめて傷の手当くらいは…」
ホク「……迷惑じゃない?」
A「とんでもないわ。
私のお家、とても広いから。」
夕陽に照らされながら
彼女は僕に手を差し伸べる。
僕を覗く綺麗な瞳と
その柔らかな顔はボクを堕とすのなんか
一瞬だった。
彼女に惹かれるままに僕は手を握った。
……これが禁忌に触れる前の話。
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作者名:和音 | 作成日時:2020年10月26日 22時