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病院に着いた頃には日は落ちて夜になっていた。



彼女の両親は俺の姿を見て、泣いた目を見開いて静かに驚いている。

傘もささずに走ったせいで髪も服もひどく雨に濡れていたからだろう。


自分のことなんてどうでもよかった。心の中にあるのは彼女が無事かどうかだけ。


「Aは…」


一気に奥深い暗闇に叩き落とされた気がした。


“目が覚めるか分からない”
“今は油断出来ない状況”


言葉が鉛のようにのしかかってくる。

啜り泣きが聞こえる中、俺はその場から逃げ出した。



嘘だ、こんなの、夢に決まってる。こんな残酷なことありえない。

だって仲直りしようって、約束したばかりじゃないか。






「はぁっ…はぁっ」




誰もいない場所に逃げてその場に力が抜けたように座り込んだ。


さっきの言葉が頭の中でひたすら繰り返される。その度に目から滝のように涙が落ちていく。




「…A」とかすれた声で呟いた。


彼女の名を呼べば、過ぎるのは幸せそうに笑った姿と最後に見た怒った顔。


ああ、なんで最後見たのが怒った顔なんだよ。

悲しみを含んだ怒りとそんな顔をさせたのは自分だろと責め立てるふたつの感情。


彼女への記憶が怒った顔で止まるのが嫌でしょうがなかった。

でもそうなったのも自分のせいで、嫌と喚いても変わることはない。




今すぐ抱きしめたくて仕方ないのに、会いたくてたまらないのに。


喧嘩した状態でこんなことになるなんて思ってもいなかった。

こんなことになるなら喧嘩なんてしなきゃ良かった。

仲直りするのだって大雨な今日じゃなくて、明日にすれば事故にあって無かったかもしれない。

彼女の元に会いに行けば、もしかしたら…




あぁ、俺のせいだ。全部、こうなったのも彼女が事故にあったのも全部。



心臓をぎゅっと掴み体を縮こませた。


息が出来ないほど苦しくて刺されたように痛い。涙が止まらない。







ごめんと何度も心の中で叫んだ。


お願い神様。彼女を、助けて。


目を覚ましてくれるだけでいい。それ以外何も望まない。

彼女がいない世界なんて意味がない。


















その日は声が枯れるぐらいぼろぼろに泣いて、気づいた頃には朝日が昇っていた。


彼女の両親はぼろぼろな俺を見て「あなたのせいじゃないのよ」と泣きながら言った。けど、俺の中では“自分のせい”というのが拭いきれない。








あれからしばらく経っても自分の中で罪悪感は消えないままだった。

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設定タグ:straykids , リノ , LeeKnow   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - リノ推しさん» そう言ってもらえて嬉しいです!これからもお楽しみいただければ幸いです! (8月21日 7時) (レス) id: 881b900482 (このIDを非表示/違反報告)
リノ推し - めっちゃ面白い最高です! (8月21日 0時) (レス) @page6 id: e3a9f906ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年8月17日 23時

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