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ゼリーやら何やらとりあえずあるものを食べてもらったら彼の顔色はほんの少し良くなっていた。
「体調はどう？」
「…さっきよりはいいかも」
「良かった」
「ありがとう、A」
そう言った彼は毛布にくるまり体を丸めていて、その姿はまるで暖をとる猫だ。
目を瞑った彼を見て寝るんだろうと思い、テーブルにあるものを片付けなきゃとその場を立ち上がろうとした時だった。
腕を掴まれた。それも簡単に振りほどけそうなぐらい弱い力で。
彼の方を見ると閉じたはずの目はうっすら開いていて、夢と現実の狭間にいるような気がした。
この人の手を振りほどくことなんて出来ない。
私は横たわった彼と同じ目線になるようにその場にしゃがみこんだ。
腕は掴まれたままだ。
「…Aが家にいるの。夢みたい。」
独り言のように話す彼の声に耳を傾ける。
「ありがとう来てくれて」
「ううん、こちらこそだよ」
薄ら開いた瞳はいつものように優しくて温かい瞳だった。
彼の姿を眺めていると、外から大きく雷が落ちる音がした。その数秒後に雨が激しく降り、この静寂な部屋に雨の音が響く。
「事故があった時もこんな雨だった」と彼が呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「…なんで、あの時…」
雨でかき消されそうな苦しんだ声。彼との距離を縮め彼の言葉を待った。
「もっと早く仲直りしてれば…」
「……ミノ？」
彼はぽつりぽつり言葉を零すように話を続ける。
あの事故の前日に私たちは喧嘩したこと。仲直りしようと事故があった日に会う約束をしたこと。それで会う前に私が事故にあったこと。
ヒョンジンさんが言っていたことを思い出した。
『そういえば、事故が起きてあなたに駆け寄った時に言ってたんです。「行かないと」って。』
『あと「待ってるのに」って。』
辻褄が合った。
大雨の中、私が会いに行こうとしていたのは彼だ。
仲直りをするために私は彼と会う約束をした。今のような大雨の日に。
「…雨は嫌だな、Aがいなくなっちゃうような気がして」
悲しそうに笑う彼を見たら胸を締め付けられた。
「いなくならないよ」と伝えたくて私は雪のように冷たい彼の手を優しく握る。
握られた手を見た彼は、逆に私の手をぎゅっと強く握り、「ごめん。」と消えそうな声で言った。
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薄(プロフ) - リノ推しさん» そう言ってもらえて嬉しいです！これからもお楽しみいただければ幸いです！ (8月21日 7時) (
レス) id: 881b900482 (このIDを非表示/違反報告)
リノ推し - めっちゃ面白い最高です！ (8月21日 0時) (レス) @page6 id: e3a9f906ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薄 | 作成日時：2023年8月17日 23時
