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病院に行くと、「イ・ミンホさんですね?」と看護師さんに確認され個室に案内された。
ドアを開けるとそこにはAの両親と、彼女の担当をしている医師がただ静かに座っていた。
「あ、ミノさん…」
俺の顔を見た彼女の両親はぎこちなく不安を隠しきれていない笑顔を見せた。
「Aの目は覚めたんですよね?」
「…ええ」
ああ良かった。彼女の意識が戻って。
「実はお話しなければならない事があります。」
医師の人は「まあ座ってください。」と優しく俺に言った。
「Aさんの意識は戻りました。」
「そうですか、良かった…」
「ですが…」
その先を言うのを躊躇っているようだった。
「覚悟して聞いてください。」
「…はい。」
「Aさんは記憶を失っています。」
「目が覚めた時は自分の名前も分からない状況でした。ですが、なんとか家族の方の名前は思い出すことはできました。ですがそれ以外の事を今は思い出せないようで…」
頭が真っ白になった。
さっきまで色々考えていたのに、彼女は俺の事を何も覚えていないという事実だけが頭に残る。
「ですが、これから思い出す可能性はあります。でも思い出すのにどれだけ時間がかかるか分からない状況です。」
「…ミノさん、もしかしたらAは何も思い出せないかもしれない。それじゃあミノさんがずっと辛い思いをしなきゃいけない。
…あなたはAの恋人なんだから。」
涙ぐんでいるお母さんの背中をさすり、彼女のお父さんは俺に語りかけた。
「これからどうするかは君が決めてほしい。」
彼女は俺の事を何一つ覚えていない。
俺と過ごした時間さえも。
彼女と離れる?
そして何も無かったことにする?
そんなこと出来るわけない。
彼女と離れるなんて一番したくない選択だ。
俺の答えは決まってる。ずっと前から。
「俺はAの傍から離れたくないです。」
この人とずっと一緒にいたいと思った。
そう思うのはこれから先も一人だけで、他に誰もいない。
「あの、お願いがあるんです。」
俺は、彼女の両親にある事を頼んだ。
この選択が良いのかは分からない。
でも、彼女を困らせないためにはこうするしかないと思った。
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薄(プロフ) - リノ推しさん» そう言ってもらえて嬉しいです!これからもお楽しみいただければ幸いです! (8月21日 7時) (レス) id: 881b900482 (このIDを非表示/違反報告)
リノ推し - めっちゃ面白い最高です! (8月21日 0時) (レス) @page6 id: e3a9f906ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薄 | 作成日時:2023年8月17日 23時