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「お久しぶりです!歩けるようになったんですね〜!」
「お久しぶりです。えっと、ヒョンジンさんですよね」
「そうです!」
名前を言うと彼は嬉しそうに笑った。やはりいつ見ても存在感が凄い。まるで芸術品のようだ。
周りにいる人もちらほら彼を見てうっとりした顔をしている。
「どうですか?記憶は戻りました?」
「少しずつ思い出している途中なんですけど…」
ヒョンジンさんが言葉に詰る私を不思議に思い、首を傾げた。
「唯一思い出せない人がいるんです。」
「その人だけですか?」
「はい」
足のリバビリをすると共に忘れた記憶を取り戻すように頭を使ったリバビリもした。
自分の家、近所の人、通っていた大学の名前、その他沢山のことを思い出すことが出来たのに、
「何度も思い出そうとしたのに、思い出せなくて。」
入院してから、一緒にいた時間が誰よりも長い人。
記憶が無い私に唯一寄り添ってくれた人。
そんな人を思い出せない私はなんて酷なのだろう。
「もしかしたらその人との思い出が多すぎるんじゃないですか?」
「多すぎる?」
ヒョンジンさんは鞄からスケッチブックと鉛筆を取り出し、すらすらと鉛筆を走らせた。
「例えば、その人との思い出一つ一つがパズルのピースだとして、思い出がたくさんあったらピースも多くなるじゃないですか。」
「はい。」
パズルのピースを複数描くと、ひとつの大きな長方形を描いた。すらすら描いた絵は驚くほど上手い。
「ばらばらな無数のピースを正確に当てはめてひとつの絵にするのは時間がかかります。このピースをその人との思い出だとしたら…」
彼の描いたパズルピースとひとつの額縁を眺めた。
パズルピース…どこかで見たような…
足元に散らばったパズルピース、目の前にある額縁。
「あ…」
思い出した。あの夢だ。
無数のパズルピースが彼に関する記憶の欠片だと言うことを。
ぼんやりとしか覚えていなかった夢が段々鮮明になっていくのが分かった。
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薄(プロフ) - リノ推しさん» そう言ってもらえて嬉しいです!これからもお楽しみいただければ幸いです! (8月21日 7時) (レス) id: 881b900482 (このIDを非表示/違反報告)
リノ推し - めっちゃ面白い最高です! (8月21日 0時) (レス) @page6 id: e3a9f906ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薄 | 作成日時:2023年8月17日 23時