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You side
薬指にはめられた指輪を見ると心が苦しくなる。
どこにも行かないように縛られているようだ。
『君は僕から離れることは出来ない。』
最初は二人で一緒に生きていく事に幸せを感じた。
でもいつからだろう。
息苦しく感じたのは。
優しくて逞しい彼が好きだから、一緒に生きようと思った。
でも一緒にいる時間が長くなっていくうちに私の行動は制限されるようになった。
関わる人を選ばれ、家から出るなと言われ、周りから評判良く思われる人間を演じるように言われた。
自分のやりたいことを押し殺して過ごすのってこんなに辛いんだ。
薬指にはめられた指輪を外し、空にかざした。
すっかり外は暗い。そろそろ戻らないと怒られてしまう。
「嫌だなぁ…」
そう思った瞬間、指輪が手から抜けていった。
転がる指輪を見て、視界がぼんやりとする。
この指輪を置いて行ってどこかに行けたらいいのにな。
どこからおかしくなってしまったんだろう。
苦しい、辛い、悲しい、帰りたくない。
気づいた頃には涙が頬を流れ地面に零れる。
泣いても意味無いのに。
「あの、これ」
声を掛けられ、顔を少し上げると制服姿の男の子がいた。
涙で視界が歪んで顔がよく見えない。
でもその人の手に持っているのは私が落とした指輪だと言うのはダイヤモンドの光で分かった。
彼は私の手のひらに指輪を置いた。
「あ、ありがとうございます。」
泣いているのがバレているのかもしれないと思うと恥ずかしい。
しかも男子高校生に見られていると思うとより一層だ。
手のひらにある指輪。
もうはめたくないけど、はめないといけない。
左手の薬指に指輪をはめようとした。
でも手が震えてしまう。
怖かった。
自ら縛られにいくみたいだ。
こんなの望んでいないのに。でも、やらないと。
震える状態で薬指に指輪をはめようとした時だった。
指輪を持った手を温かく大きな手で押さえられた。
その手は指輪を拾ってくれた男子高校生の手。
彼は私から指輪を取り、私の左手を持った。
「…?」
何が起こるのか予想出来なかった。
彼はゆっくり私の薬指に指輪が通した。
優しくて温かい手だった。
突然の事に涙が治まり、彼の顔が段々鮮明に見えてくる。
その顔は綺麗で、見惚れてしまいそうになる美しさだった。
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作者名:薄 | 作成日時:2023年3月4日 0時