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今の生活が悪いわけじゃない。
成績は真ん中より上だし、体力もそこそこ。校則だってしっかり守ってる。
それに、人間関係に悩んでるわけもないし、親と不仲でもない。
至って普通な生活。
でもその普通がふとした時に嫌になる。
用があれば話すくらいのクラスメイトで、友達と呼べる人は私にはいない。
「放課後にどこ行く?」と明るい茶髪をなびかせて楽しそうに話してる女子達が私にはきらきらして見えて羨ましいと思った。
私だって放課後誰かと出掛けてみたい。髪だって可愛くセットしたいし、こんな机と向かってる生活はつまらない。
髪を染めるのは禁止という校則を破って遊んでいる子達は校則を守ってる私より遥かに楽しそうで幸せそうで。
私もそんなことできたらいいのに。
普通じゃないことがしたかった。
でも私一人じゃそんなことできない。
臆病な自分が日に日に嫌になっていく。
高校生活ってこんなに色褪せたものだっけ。
一人歩く坂道でずっとそんなことを考えながら歩いた。
夏だからか目の前の景色が滲んでいるように見える。
遠くにある青くて綺麗な海も帰り道はいつも見ているから特別綺麗だとは思えなくなった。
でも海を見ると薄黄色の髪をなびかせた彼を思い出す。
海を眺める彼を帰りに私はよく見かける。
話しかけるわけでもない。
遠目で見て何を考えているんだろうと思いながら通り過ぎていくだけ。
それがいつも。
歩いていくと、やはり海を眺める彼の姿がある。
いつも見えるのは背中だけだから顔は分からない。
でも、同じ制服だからもしかしたら学校で彼の顔を見ることが出来るのかもしれない。
それが今一番つまらない人生で気になっていることだった。
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作者名:薄 | 作成日時:2023年2月24日 18時