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『ダンスのお時間となりました』
とアナウンスが流れ、クラシックな曲が流れた。
一斉に中央に人がダンスの為に集まっていく。
「星宮さん、僕と踊ってくれませんか？」
「はい。是非、喜んで」
紫耀は彼女の手を取り、中央に入っていった。
他の知らない男と踊るよりは紫耀と踊ってもらった方が良かったから少し安心する。
そしてダンスが始まる。
ドレスがひらりと舞う姿は美しくて、思わず見蕩れてしまう。
中でもやはり彼女と紫耀だけが異様に目立っていた。
「お姫様」と「王子様」がよく似合う2人が踊っている姿は観客の目を捉えて離さない。
『まぁ、素敵ね』
『やはり絵になるな』
『美しい…』
周りは2人に釘付けだった。
それに俺も含めて。
少しだけ紫耀が羨ましかった。彼女と踊れるなんて。しかも人の心を引き付けられるなんて。
羨ましいけど、ずっと眺めていたかった。
「すいませーん」
突然後ろから話しかけられ、振り返るとそこには赤いドレスに真っ赤な唇で茶髪のロングの女性がいた。
「写真撮ってほしくて、ちょっとこっち来てくれる？」
その女性は俺が何か言う前に腕を引っ張り、ダンスの場所から離れていく。
「写真を撮る場所はどこでしょうか」
「ここかしら」
彼女の足が止まった。そこは会場で光が当たりづらい壁沿いだった。
写真を撮るには少し暗すぎる。
「ここは少し暗いと思いますが」
俺がそう言うと、その女性は俺に微笑んだ。
微笑んだ瞬間、クラシック調の音楽が突然止まった。
そして会場全体の照明が消えた。
「…！」
ダンス会場から戸惑いの声が聞こえてくる。
まさか、
俺が動こうとするとその謎の女性は俺の腕を掴み、急に抱きついてきた。
「離して頂けますでしょうか」
そう言うと、その女性は俺の首に腕を回し、耳元で囁いた。
「"美しい姫には薔薇を”」
彼女を振り払った。そして急いでダンスの場所へ走った。
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作者名：薄 | 作成日時：2022年11月19日 0時
