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部屋へ行くと、沢山のドレスが並べてあった。
マーメイドラインの青いスパンコールドレスや、ワインレッドのワンショルダードレスやら様々な種類がある。
「え、去年より増えてる」
去年より異様にドレスが多い気がする。
「今年は非常に素材が良く入っておりまして、皆仕事に精を出しております」
仕立屋が嬉しそうに言った。
だとしてもこんな何十着…
考えようとしたが、まずはドレスを選ぶのが先だ。
目に入ったマーメイドラインのピンクのドレスを手に取った。
「これ合うと思う？」
永瀬に自分とドレスを合わせて聞いた。
「大変お似合いです」
「じゃあこっちは？」
次に色違いの紫のドレスを合わせた。
「それも大変お似合いです」
「なんで同じことしか言わないのよ」
「それはどれもお似合いだからですよ」
ダメだ。まったく参考にならない。
自分で選ぶのもいいが、やはり他者からどう思われるのかが今回は大事だ。それにこの大量のドレスから自分で１着選ぶのがまず難しいかもしれない。
「…じゃあ永瀬はどうゆうのが好きなの」
「えっ？」
初めて聞いたかもしれない腑抜けた声だった。
「どうゆうのが好きなの」
「私に聞いても意味はないと思いますよ」
「いいから教えて。
…そうね、これは命令」
滅多に使わない命令をここで使うのは中々新鮮だった。
永瀬は少し考えてから小さな声で言った。
「…青とか」
彼は照れくさそうに言った。
「あとはどんなデザイン？」
「どんなって…」
「命令だからね」
「……」
彼は何も言わずに指を指した。
指を指した方向にあるドレスをみると首に沿ったハイネックで襟元がシースルーになっているタイプだった。
「こうゆうのが好きなのね」
笑いながら言うと、永瀬はしゃがみこんで「…命令っていうから」と口元の前で左右の指を合わせた。
それが可愛いなと内心思ってしまった。
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作者名：薄 | 作成日時：2022年11月19日 0時
