23 ページ23
噴水前のベンチに彼女は座った。
彼女は思い詰めた顔をして口を開いた。
「私が呼び出されたのは、両親が今いないから」
彼女が話したのは自分のことだった。
「お父さんは有名な医療科学者。お父さんが作った薬で色んな人を救ってきた。お母さんはそのサポート。」
「お父さんとお母さんがいた時は星宮家は知らない人に呼び出されるなんてなかった。私しかこの家にいないってことが分かった途端、急にこうゆうことが起きてる。」
弱々しい震えた声で
「私、舐められてる」と言った。
「2人がいない間、私が星宮家を支えないとダメなのに、私が星宮家を落としてる」
「強くて頼りになる当主になろうってずっと思ってた。なのに…
なんでこんな上手くいかないんだろ」
ポロポロと涙が溢れている。
今まで誰にも打ち明けずにずっと星宮家を背負っていた彼女。
こんなに長い間この家を守らないといけない使命があると考えたら俺ならとっくにここから抜け出してるのかもしれない。
もっと早く、彼女の執事になってればこんな顔させなかったのに。
悔しくてたまらなかった。
「こんな頼りない当主でごめん。私に執事なんて勿体ないのかな」
「そんなこと一切ありません。私は…」
あなたを守るために執事になった。
そう言いたかった。
だけど掟がある。
言えないのが苦しかった。
俺は座ってる彼女に目線を合わせた。
「頼りないなんて思った事一度もありません。私は星宮様を尊敬しています。机に置いてある何十通の手紙、あれに全て返事を書いていますよね。それを見て星宮様の執事になれて良かった、この方に仕えたいと思いました。」
「星宮様はとても周りに優しいと思います。それは誇るべき事です」
「誇る、べき…」
泣き止んだ彼女からまた涙が落ちてくる。
俺は彼女が泣き止むまで手を握った。
＿＿＿＿＿＿＿＿
気づいたら彼女は泣き疲れたのか目を赤くして寝ていた。
彼女を抱え、部屋に入った。
気づけば時計の針は12時。
彼女をベットに運んだ。
そして彼女の涙を拭う。
「……A」
もう泣かせない。
笑っていてほしいから。
俺がなんとかするしかないんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：薄 | 作成日時：2022年11月19日 0時
