For you (ページ3)

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「ねぇ廉！」

毎日笑顔で駆け寄ってくるあの子。

「今日はね…」

その日にあった事、めんどくさい習い事、美味しいご飯のことをAはぺらぺらと喋る。

その話を聞くのがとても好きだった。

それがいつものこと。

でも今日は違った。

下を向きながら僕にゆっくり近づいてくる。顔は見えない。

「A？どうしたん？」

駆け寄って顔を覗くとそこには初めて見たAの顔。

目に一切光が無くて、何かに失望したような顔だった。

「…やだ、廉に会えなくなっちゃう」

震えた声でそう言った。

Aの目からぽたぽたと雫が落ちた。

会えなくなるって？どうゆうこと？

「パパが外に出るなって。」

外に出るなって言われても出るのがAだ。なのに彼女は今泣きながら震えている。

「なんで…」

Aに聞こうとした瞬間、後ろから「お嬢様」と声がした。

振り向くとそこには女の人が立っていた。メイドだろうか。

「お屋敷に戻りましょう、永瀬様もよろしいでしょうか。お話があります。」

「話？」

星宮家から呼び出されるなんて珍しいことだ。

庶民の僕がこの家の姫に近づくなと言いたいのだろうか。